白紙の前に座す
未来の文豪たち
ペンを握りしめ
夢を紡ぐ

「才能がある」と
自らに言い聞かせ
まだ見ぬ読者の
歓声に酔いしれる

批評家の絶賛を
想像の中で浴び
文学賞という
栄光に憧れる

しかし現実は
冷たい鏡
映るは不安げな
自分の姿

コンビニのレジで
才能は買えぬと知り
深夜の街を彷徨う
影法師と共に

「私は作家になる」
呪文のように唱え
自己暗示の檻に
閉じ込められてゆく

キーボードは沈黙し
モニターは白く輝く
頭の中の物語は
指先で凍りつく

完璧を求めるあまり
削除キーを押し続け
消えゆく文字と共に
自我も溶けてゆく

締め切りという幽霊に
追われる日々
しかし追っているのは
自分自身の影

ベストセラーの甘い蜜を
夢見ては現実逃避
本当に書きたいものは
何なのかも忘れて

自己実現か
大衆の承認か
揺れる天秤の針に
心も揺れる

「才能」という言葉に
縛られ苦しみ
努力では埋められぬ
深淵を覗く

「伝えたいことがある」
そう叫びながらも
その「こと」が何なのか
自分にも分からない

言葉は風のよう
掴もうとすれば
指の間をすり抜け
どこかへ消えてゆく

名声という蜃気楼を
追いかけ続ける
砂漠をさまよう旅人
喉の渇きは癒えず

小説家志望の思い込み
それは底なし沼
足掻けば足掻くほど
深みにはまってゆく

物語を書くのか
自分を書くのか
その境界線は
いつも曖昧

完璧な物語は
頭の中だけに存在し
現実の紙の上には
決して降り立たない

文学賞という
至高の玉座を夢見て
しかしその玉座は
雲の上にある

自我が溶ける夜
街灯の下で
影が千切れて
言葉になる

それらの言葉は
決して紙の上には
降り立たないけれど
心の中で踊る

未完の原稿が
積み重なる机上の王国
その一枚一枚に
夢と野望が刻まれる

出版されていない本の
帯文を考える午前3時
現実と幻想の狭間で
揺れる魂

創造性は
完璧主義という檻の中で
息絶えそうになりながら
それでも生き続ける

小説家への道のりは
実は自分自身を
見つめ直す旅
そう気づく朝

新たな一日が始まる
昨日までとは
少し違う顔で
街に出る

「小説家になりたい」
でもそれは
肩書きのためではない
自分の物語を紡ぐため

真の挑戦は
これから始まる
自分自身との
果てなき対話

言葉の海に溺れながら
それでも泳ぎ続ける
未来の文豪たちよ
君たちの物語は