大学3年の春、私たちの小さな文芸サークル「インクの海」に彼が現れた。

「よろしく、山田だ」
そう言って入ってきた彼の眼差しには、どこか危険な輝きがあった。

最初は誰も気づかなかった。いや、気づかないふりをしていたのかもしれない。山田の存在が徐々にサークルの空気を変えていくのを、私たちは黙って見ていた。

彼は美しかった。そして、才能があった。彼の書く詩は、私たちの心を掴んで離さなかった。でも、それと同時に、彼は破壊的だった。

「この詩、つまらないね」
「君の小説、なんか古臭いよ」
彼の言葉は鋭く、そして的確だった。でも、それは同時に残酷でもあった。

一人、また一人と、サークルのメンバーが去っていった。

「山田はサークルクラッシャーだ」
誰かがそうつぶやいた時、私たちは既に半分以下になっていた。

そんな時、私は思いついた。

「山田くんの批評を、私たちの創作に活かそう」

最初は皆、懐疑的だった。でも、私は諦めなかった。

「彼の言葉を、私たちの糧にしよう。彼の存在を、私たちの創作のエネルギーに変えよう」

そして、私たちは変わり始めた。

山田の辛辣な言葉を、私たちは真摯に受け止めた。そして、それを乗り越えようと必死に努力した。

驚いたことに、山田も少しずつ変わっていった。

「君たち、面白くなってきたじゃないか」
彼の言葉に、初めて褒め言葉が混じるようになった。

そして、私たちの作品は確実に良くなっていった。山田の存在が、私たちを高みへと押し上げていったのだ。

ある日、山田が言った。
「僕、実は作家志望なんだ。でも、自分の才能に自信が持てなくて...だから、他人を批判することで自分を保っていたんだ」

その瞬間、私たちは理解した。山田は私たちと同じだったのだ。不安と向き合い、それを乗り越えようともがく、ただの若者だったのだ。

「山田くん、一緒に小説を書かない?」
私がそう提案すると、彼は少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になった。

「うん、やってみたい」

そして、私たちは一緒に書き始めた。山田の鋭い洞察力と、私たちの柔軟な発想。それらが融合して、素晴らしい作品が生まれていった。

気がつけば、「インクの海」は大学で最も注目されるサークルになっていた。そして、私たちの合作小説は、新人文学賞を受賞した。

卒業式の日、山田が私に言った。

「ありがとう。君たちが僕を受け入れてくれたおかげで、僕は本当の自分を見つけることができた」

私は笑って答えた。
「私たちこそ感謝してるよ。君がいたから、私たちは成長できた」

そう、山田は確かにサークルクラッシャーだった。でも、彼は同時に私たちの可能性を引き出す触媒でもあった。

私たちは彼を200%楽しむことで、自分たちを200%高めることができたのだ。

今、私たちは皆、それぞれの道を歩んでいる。でも、時々集まっては、あの頃の思い出を語り合う。そして、新たな物語を紡ぎ出す。

サークルクラッシャーは、私たちにとって最高のミューズとなったのだ。

これが、私たちがサークルクラッシャーを200%楽しんだ方法。そして、それは単なる「対処」から、私たちの人生を豊かにする「エンタメ」へと昇華したのだった。