『この世の喜びよ』は、二人称の語り口で書かれた珍しい小説集です。表題作では、ショッピングセンターの喪服売り場で働く女性を「あなた」と呼びかけ、その日常を描きます。彼女は同僚や客との交流を通して、娘たちを育てた思い出や現在の関係を反芻しながら、人生の甘さと苦さ、愛おしさを感じています。
作品全体を通して、平坦な文体と詩的な表現が印象的で、登場人物たちは皆、何気ない日常の中で思いを巡らせています。普通の生活の中にある、ささやかな喜びや寂しさ、そして人と人との関わりの儚さと尊さが描かれており、読者にも人生の喜ばしさを感じさせてくれます。
一方で、物語の展開に盛り上がりが少なく、わかりにくさを感じる読者もいるようです。また、二人称の語りや主題の珍しさが評価された一方、内容の平凡さを指摘する声もあります。
全体として、『この世の喜びよ』は、日常の中に潜む喜びと人との繋がりの意味を静かに問いかける、技巧的で美しい小品集と言えるでしょう。読者によって受け止め方は分かれますが、現代日本文学の一つの可能性を示した作品と評価できます。
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