道尾秀介の短編集『いけない』は、各章の最後に挿入された写真を手がかりに、読者自身が事件の真相を解明していくという斬新な手法を用いたミステリー作品である。
物語の舞台は、自殺の名所である「弓投げの崖」を擁する二つの架空の町。各章のタイトルには「いけない」の文字が織り込まれ、巻頭には「本書のご使用方法」と題された真相への導きが記されている。こうした趣向は、読者のワクワク感を高めるのに一役買っている。
謎解きの難易度はさほど高くなく、伏線をきちんとたどることで写真の意味を読み解くことができる。しかし、一部の読者からは、ストーリー自体の面白みが薄く、真相が明らかになったとしても物語への没入感が乏しいという意見も聞かれた。犯人の心情や背景への踏み込みが不足していることが、その一因かもしれない。
また、作品全体を通して漂うイヤミスな雰囲気も特徴的だ。ラストシーンでは、登場人物の小学生二人が町の平和を信じる爽やかな会話を交わすが、実際には犯罪者たちが野放しになっているという皮肉が込められている。
読後感の評価は分かれるところだが、写真を用いた新しい謎解きの手法自体は興味深く、ミステリーファンの関心を惹きつけるに十分だろう。一度読み終えた後、解説サイトを参照しながら再読することで、より深く作品を味わうことができる。
総じて『いけない』は、独自の手法に挑戦した意欲作であり、ミステリーの新たな可能性を感じさせる一冊だ。ただし、物語やキャラクターの深み、感情移入のしやすさという点では、やや物足りなさを感じる読者もいるかもしれない。道尾秀介ならではの巧みな伏線の張り方と衝撃的などんでん返しは健在だ。
(おわり)
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