ナナメの夕暮れ (文春文庫)
若林 正恭
文藝春秋
2021-12-07


「ナナメの夕暮れ」は、オードリーの若林正恭さんによるエッセイ集です。若林さんは、テレビのMC、ラジオのパーソナリティ、漫才師など、多方面で活躍していますが、本書では内面をさらけ出し、悩める人間の姿を描いています。読者は、若林さんの言葉に共感し、自分自身の感情や経験と重ね合わせることができるでしょう。

若林さんは、現代社会における生きづらさや葛藤を抱えながらも、自分と向き合い成長していく過程を赤裸々に綴っています。本書には、若者が自分の意見を持てない現代社会への警鐘や、「モノよりコト、コトよりヒト」という人生訓など、示唆に富む言葉が散りばめられています。

特に印象的なのは、冒頭の「多様化された世の中では自分の中に正解を持てなくなる。なんとなく正しいことを言ってそうな、有名人のコメント、Twitterのアカウント。誰かの正論に飛びついて楽をする。自分の中の正解と誰かの正論は根本的に質が違う」というフレーズです。これは、情報があふれる現代社会において、自分の意見を持つことの難しさを表現しています。

また、若林さんは、自身と同年代の人々が経験した「自分探し」の時代について触れています。90年代終わりから2000年代初頭は、スマートフォンや発達した検索機能がなく、「手探り」で自分のやりたいことを見つけていた時代だったと述懐しています。一方で、現代の若者は、検索やスマートフォンに依存しすぎるあまり、「なんとなく悟った」状態に陥りやすいと指摘しています。

本書には、ドラマ「だが、情熱はある」の元となったエピソードも収録されています。ドラマでは一つの軸になっていたまえけんさんのエピソードは、短いながらも濃密な内容となっています。

若林さんは、自己肯定感の低さや、優秀であることを求められる環境で育ったことによる拗らせた性格を持っています。高校時代の文化祭に夢中になれなかったり、卒業式で涙を流せなかったりした経験は、多くの読者が共感できるでしょう。また、本当は好きなことをしたいのに、「優秀でなくてはならない自分」が邪魔をしてしまう心理状態は、現代人の多くが抱える悩みでもあります。

しかし、本書を通じて、若林さんは純粋に好きなことをすることの大切さや、自分に肯定的になることの重要性を説いています。「肯定ノート」を書くことで、自分の好きなことを再発見し、恥ずかしがらずにそれを実行に移すことの大切さを説いています。

読者は、若林さんの言葉に励まされ、自分自身の気持ちや経験を見つめ直すきっかけを得ることができるでしょう。また、若林さんの拗らせた性格や、優秀であることを求められる環境で育ったという背景は、多くの読者が共感できる点でもあります。

「ナナメの夕暮れ」は、幅広い年齢層の人々が共感できる、温かみのあるエッセイ集です。若林さんの言葉は、読者を励まし、自分自身と向き合うことの大切さを教えてくれます。本書を読むことで、読者は自分自身の感情や経験を見つめ直し、前向きに生きるための勇気を得ることができるでしょう。