1. 11次元について
11次元は、弦理論(物質の基本構成要素を微小な振動する「ひも状」のものとする理論)において提唱されている、時間1次元と空間10次元を合わせた次元の概念です。私たちが認識している4次元(時間1次元、空間3次元)に加え、極微の尺度で「丸まった」7つの余剰次元が存在するとされています。これらの余剰次元は、プランク長(約10^-35m)よりも小さな空間スケールを持ち、直接観測することは極めて困難です。11次元の存在は、重力を含めた自然界の4つの力(電磁気力、弱い力、強い力、重力)を統一的に記述するための鍵として考えられており、多次元宇宙論の中心的なアイデアとなっています。
2. 11次元の歴史
11次元の概念は、1920年代にカルツァ・クラインが5次元時空の理論を提唱したことに端を発します。1970年代になると、string理論の登場により、10次元や26次元の時空が議論されるようになりました。1980年代後半、エドワード・ウィッテンらによって、5つの異なる弦理論を包括するM理論が提唱され、11次元時空の存在が示唆されました。1995年、ホーラヴァとウィッテンが11次元の枠組みで弦理論を定式化し、「M理論」という名称が与えられました。以降、11次元時空は弦理論における重要な概念として発展し、ブレーンワールド(私たちの4次元宇宙が高次元時空に埋め込まれた「膜」である)などの派生的なアイデアも生み出されています。
3. 11次元の作り方
11次元時空の構築には、高度な数学的手法が用いられます。まず、11次元のミンコフスキー時空(特殊相対性理論における平坦な時空)を基盤とし、それにアインシュタインの一般相対性理論を適用します。次に、カラビ・ヤウ多様体(6次元の特殊な形状を持つ空間)を用いて、余剰次元を「コンパクト化」します。これにより、4次元の時空と、直接観測できない微小な7次元の空間が生み出されます。さらに、D-ブレーン(Dirichlet膜)と呼ばれる多次元の膜状の物体を導入し、開いた弦と閉じた弦の境界条件を設定します。これらの数学的操作を通じて、11次元時空の性質や物理法則が記述されるのです。
4. 11次元の描写-例文3つ
a) 主人公が目を開けると、そこは知られざる次元の狭間だった。4次元の感覚を超越し、無限に広がる11次元の世界が、神秘的な姿を現す。超ひも(弦)が織りなす複雑な模様が、虚空を埋め尽くし、余剰次元の息吹が全身を包み込んでいた。
b) 科学者たちは、加速器を用いて11次元の証拠を探していた。高エネルギーの衝突実験により、カラビ・ヤウ多様体の形状を反映した特異な粒子の生成を期待していたのだ。もし、その予兆を捉えることができれば、人類は多次元宇宙の扉を開ける鍵を手にすることになる。
c) 宇宙飛行士は、ブラックホールの事象の地平面に近づいていた。強大な重力に引き込まれながら、11次元の織物が歪み、異次元への入り口が開かれる。その先には、私たちの宇宙を超えた、未知なる次元の世界が広がっているのかもしれない。
5. 11次元の現実性と創作の余地
11次元の概念は、現代物理学における重要な理論的枠組みですが、実験的な検証は極めて困難とされています。超弦理論や M理論は、素粒子物理学の標準模型を超えた統一理論の有力な候補ですが、それらの予言する現象は、現在の加速器の性能をはるかに超えたエネルギースケールで生じると考えられています。しかし、SF作品においては、11次元の概念を自由に展開し、独自の解釈を加えることができます。余剰次元の性質や、多次元時空の構造を想像力豊かに描写し、現実の物理法則を超えた現象を探求することが可能です。また、11次元の世界と私たちの4次元宇宙との相互作用を描くことで、新たな叙事詩的スケールの物語を紡ぐこともできるでしょう。11次元は、SFにおける無限の可能性を秘めた舞台設定であり、創作者の想像力を刺激する魅力的なテーマなのです。
小説なら牛野小雪がおすすめ【kindle unlimitedで読めます】
小説なら牛野小雪がおすすめ【kindle unlimitedで読めます】
コメント