強すぎて試合が組まれることさえなかったボクサーのシロー エルフの女騎士リーリャは ドワーフのタヌカナと別れ とうとう二人きりになる
そして なにかが起きようとした時 「待て」 と声がかかる
振り返ると そこには妹のルカが立っている
「お兄ちゃん いつまで異世界にいるの 世界チャンピオンになる夢はどうしたの」 ルカが怒る
「えっ でも試合は組まれないし 異世界で暮らすのもいいかなって」 とシローは言い訳する
「チャンピオンって?」 リーリャが首をかしげる
シローはボクシングという概念とチャンピオンのことを説明し始める
「ボクシングっていうのは 拳で相手を倒すスポーツなんだ 世界中から強いボクサーが集まって 試合をするんだ 一番強いボクサーのことを世界チャンピオンって呼ぶんだ 俺はそのチャンピオンを目指していたんだけど 強すぎて試合が組まれなくなっちゃってさ」
リーリャは驚きの表情を浮かべる
「お兄ちゃん 元の世界に帰ろう リーリャさんにも話したでしょ」 ルカが説得する
「バカ言うなよ だって 俺は・・・」 シローは言葉を濁す
リーリャは複雑な表情を浮かべる 自分のせいでシローの夢を奪ってしまったのかもしれない その重さに胸が苦しくなる
「ごめんなさい シロー 私のせいで あなたの人生を狂わせてしまった」 リーリャは涙ぐむ
「ち 違うぞ リーリャ お前のせいじゃない」 シローは慌てて否定する
「でも・・・」 リーリャは言葉に詰まる
ルカは二人を見つめ 決断を下す
「リーリャさん 一緒に私たちの世界に来てください シローはリーリャさんと一緒じゃないと幸せになれないと思うの」
リーリャとシローは驚きの表情で ルカを見る
「でも 私はエルフで・・・」 リーリャは戸惑う
「関係ないわ リーリャさんはリーリャさんのままでいいの」 ルカは微笑む
シローも真剣な表情で リーリャに語りかける
「リーリャ 一緒に来てくれ 俺は お前と一緒にいたいんだ」
リーリャの瞳から涙があふれる 「シロー・・・」
こうして シローはリーリャと妹と共に 元の世界へ帰ることを決意する
シローの元には たくさんのファンレターが届いていた 彼の帰りを待ちわびる人々の声だ
「シロー お帰り」 「試合を見たいです」 「世界チャンピオンになってください」
シローは感動に胸を熱くする リングへの思いが再び燃え上がる
そして とうとう試合が組まれる 相手は身長2m150kgの超ヘビー級ボクサー 体格だけではなく巨体からは想像できないほどテクニックも磨かれている シローが異世界にいる間に バハムートと呼ばれるほどの強敵が現れていたのだ
観客席には リーリャとルカの姿がある 二人はシローに声援を送る
「頑張って シロー」 「お兄ちゃん 勝てるよ」
シローはリングに上がり グローブを構える
(俺の人生は ここから始まるんだ)
シローの瞳に 熱い炎が宿る
ゴングが高らかに響き渡り 試合の幕が切って落とされる
新たな伝説の始まりを告げるかのように
(ボクシングが強すぎて異世界に逝ったらエルフの女騎士と冒険に出ることになった おわり)
(ボクシングが強すぎて異世界に逝ったらエルフの女騎士と冒険に出ることになった おわり)
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