この小説「流星を打ち砕け」は隕石災害に見舞われた世界を舞台に藤原千秋とポロ部の馬・ユニコの絆を軸に展開するファンタジックでハートウォーミングな物語である。

千秋は隕石の夜に吉野川大橋から落ち、パパやママ、そして愛猫のクッキーとはぐれてしまう。だが、避難所では馬を連れて行けず、千秋はユニコと共に砂浜で寝起きする日々を送ることになる。現実と非現実が交錯する不思議な雰囲気の中でユニコとの冒険や他者との交流を通して、千秋は大きく成長していく。

一方、クッキーの視点で描かれるパートは人間と動物、そして動物同士の関係性を鋭く風刺しつつユーモアを交えて綴られている。美しさと愛を巡るクッキーの奮闘は作品に一種のシュールなタッチを加えている。

ラストで明かされる衝撃の事実は読者を驚かせるが、同時に千秋とクッキーの深い絆を印象付けるものとなっている。ユニコの突然の死は悲しみに包まれているが、その死を通して千秋が新たな「強さ」を手に入れたことが暗示されている。

全編を通して軽妙な語り口でありながら、登場人物たちの心情は丁寧に描写されておりページをめくる手が止まらない。現実と非現実、喜びと悲しみ、別離と再会が絶妙に織り交ぜられた、読後感の良い秀作と言えるだろう。牛野小雪氏の真骨頂とも言える、古き良き純文学の香りがしつつも、現代的な感性で彩られたフレッシュな作品である。




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