この小説は主人公の森正文とその恋人の長谷川美夏という二人の人物を中心に、薬物依存や万引き、空き巣などの犯罪行為に手を染めていく過程と、そこから抜け出そうとする葛藤を描いた作品です。

物語は森正文が童貞を捨てるために風俗店を訪れ、そこで小学校時代の同級生だった長谷川美夏と再会するところから始まります。二人は薬物に手を出し、徐々に依存していきます。一方で正文は営業マンとして優秀な成績を収めていますが、薬物の影響で仕事も徐々にうまくいかなくなります。

長谷川は万引きを繰り返し、正文は空き巣に手を染めるなど二人は犯罪行為にのめり込んでいきます。しかし、ハワイ旅行をきっかけに薬物をやめようと決意し、一時的には立ち直ります。

ところが再び薬物に手を出してしまい、さらに深みにはまっていきます。長谷川は麻薬取締官を殺害し、正文はその死体を長谷川と共に海に捨てます。最後は二人で崖から海に身を投げ、正文だけが生還するという衝撃的な結末を迎えます。

この作品は薬物依存という重いテーマを扱いながらもリアリティのある描写で読者を引き込んでいきます。主人公たちの心理描写も丁寧になされており、彼らが犯罪に手を染めていく過程が説得力を持って描かれています。

また「エバーホワイト」というタイトルは、純白を意味する言葉ですが、物語が進むにつれ、主人公たちが「白」から遠ざかっていく皮肉を表しているようにも感じられます。

全体としては、薬物依存という社会問題を真正面から取り上げ、リアリティのある描写で読者に強いメッセージを投げかける作品だと言えます。犯罪に手を染めていく主人公たちの姿は同じ過ちを繰り返さないための警鐘としても読み取ることができるでしょう。

正文が最後に海を見つめるラストシーンは彼の心の空虚さと失ってしまったものの大きさを象徴しているようで印象的でした。この作品は、薬物依存の恐ろしさと、それが引き起こす悲劇を読者の心に深く突き刺さる形で描き出していると言えるでしょう。





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