小説『法人税一〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇%』は法人税率を一〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇%にするという非現実的な物語を通して、私たちが無意識のうちに前提としているメタナラティブ(大きな物語)を解体し、意味の多様性と不確定性を示唆するポストモダン的な作品だと言えるだろう。

ポストモダニズムとは近代的な理性や進歩への信仰、普遍的な真理の存在などを疑問視し、多様性や相対性を重視する思潮である。ジャン=フランソワ・リオタールは、ポストモダンの条件として、"メタナラティブに対する不信"を挙げた。メタナラティブとは歴史や社会についての大きな物語のことで、例えば"理性の進歩"や"階級闘争"などがこれに当たる。

『法人税一〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇%』は"経済の安定"や"合理性の追求"といったメタナラティブを解体する。法人税率を一〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇%にするという非現実的な要求が物語の中で現実のものとなっていく過程は私たちが無批判に受け入れている"常識"や"合理性"の基盤を揺るがす。この作品は私たちの認識の枠組みそのものが実は恣意的で不確かなものであることを暴き出しているのだ。

またこの作品は意味の多様性と不確定性を示唆している。"法人税一〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇%"という言葉は物語の中で様々な意味を帯びていく。当初は非現実的な要求を表す言葉でしかなかったものが次第に社会を動かす力を持つようになる。しかし、その意味は決して一つに確定されることはない。この言葉は登場人物や読者によって多様に解釈され、意味の遊戯の対象となっているのだ。

ジャック・デリダは意味の不確定性と遊戯を重視する脱構築の思想で知られるが『法人税一〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇%』はまさにこの脱構築的な読みを誘発する作品だと言える。この物語は一つの確定した意味を持つのではなく、読者の解釈によって多様な意味を生み出す。作品の意味は作者の意図を超えて読者との相互作用の中で生成されていくのである。

さらにこの作品は現実と虚構の境界を曖昧にすることでポストモダン的な効果を生み出している。非現実的な設定でありながら私たちの社会の縮図のようにも見えるこの物語は現実と虚構の区別そのものに疑問を投げかける。私たちが"現実"と呼ぶものも、ひょっとしたら一つの虚構なのかもしれない。『法人税一〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇%』はそんな根源的な問いを私たちに突きつけているのだ。

以上のように『法人税一〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇%』はメタナラティブの解体、意味の遊戯、現実と虚構の境界の曖昧化といったポストモダン的な特徴を備えた作品だと言える。この小説は私たちが無意識のうちに前提としている認識の枠組みを揺るがし、意味の多様性と不確定性を示唆することでポストモダンの文学的実践を体現しているのである。





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