この小説は高崎望という少年の高校生活を描いた青春小説です。リーゼントの髪型に憧れ、強くなることを目指す望の成長物語であると同時に、愛梨という女の子との恋愛や、友人との絆なども重要なテーマとなっています。
物語は望が上等高校に入学するところから始まります。最初は目立たない存在だった彼が井上さんという先輩に出会い、リーゼントにすることで「強い男」を目指し始めます。しかし、それは単なる見た目の変化にとどまらず内面的な成長も伴っていきます。特に外道高校の不良との衝突を通して、望は自分の弱さと向き合い、本当の強さとは何かを考えるようになります。
また、愛梨との恋愛の進展も物語の大きな見どころです。最初は片思いに近かった二人の関係が、様々な困難を乗り越えながら少しずつ深まっていく過程が丁寧に描かれています。お互いの気持ちを告白し合うシーンは感動的でした。
一方で、幼馴染の小林君との確執も見逃せません。些細なすれ違いから始まった二人の関係悪化は本音を言い合えない状況が長く続きます。しかし最後はお互いの誤解が解けて和解するシーンは読んでいてすっきりとした印象を受けました。
この作品の魅力は単なる恋愛や友情だけでなく、望の内面的な成長が細やかに描写されている点にあると思います。リーゼントをやめて坊主頭になるシーンは象徴的な場面だったと言えるでしょう。「強くなりたい」という思いは変わらずとも外見だけでなく内面を磨くことの大切さに気づいていく過程が印象的でした。
また、将来への不安を抱えながらも仲間と支え合って成長していく姿は多くの読者の共感を呼ぶのではないでしょうか。透や舞、愛梨など、個性的な登場人物たちとの関わりを通して、望は一回りも二回りも成長していきます。
全体を通して、等身大の高校生たちの姿が活き活きと描かれた作品だと感じました。笑いあり、涙ありの展開はまさに青春そのものです。人との繋がりの大切さ、自分らしく生きることの意味など、読後に様々なことを考えさせられる、示唆に富んだ物語だったと思います。
(おわり)
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