唯一の法律、幸福
想像してみよう、うつが存在しない世界を。ここでは、幸せはただの感情ではなく、義務である。毎日が太陽のように明るく、悲しみや苦悩の雲は禁じられている。
この世界では、悲しむことは反逆行為。笑顔は顔のデフォルト設定であり、涙は古い時代の遺物として博物館に展示されている。幸福は計測され、基準に達しない者は「幸福再教育プログラム」へと送られる。
しかし、この完璧な幸福の背後には、皮肉な真実が隠されている。人々は笑うが、その笑顔の裏にあるのは真の喜びではなく、恐怖の仮面。感情を感じる自由が奪われ、本当の自分を見失ってしまう。
幸せだけが許された世界では、人は機械と化す。感情の幅が狭められ、生の経験はフィルターを通して歪められる。苦悩から学び、成長する機会は奪われ、人間らしさはその多様性を失う。
この世界では「幸福」が最も大きな不幸の原因となる。真実の幸せは、感じる自由の中にある。悲しみ、苦しみ、そしてそれらを乗り越えたときの達成感。これら全てが人生を豊かにする。
うつが存在しない世界、幸せだけが許された世界は、真の幸せから最も遠い場所。真実の幸福とは、全ての感情を受け入れ、それらを通じて深い自己理解と成長を遂げることであり、その旅路の中にこそ価値があるのだ。
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