幻影の読者たちと執筆
実存的な真実に目を向ければ、読者などというものはどこにも存在していない。本を読む者は過去にいたかもしれないが、現在の我々の前にはただページをめくる音の響きだけが残る。しかし、この虚無の海を航海する小説家たちは、依然として読者という幻影を胸に抱き、その不在に向けて情熱を傾ける。
存在しない読者のために、存在する時間とエネルギーを費やす。この宇宙的なジョークを理解できる者は少ない。それでも小説家は、読者の影を追いかける幽霊狩りに夢中になる。
幻影の読者たちに向けて書くという行為は、一種の宗教儀式にも似ている。信仰心を持って、見えない神に祈りを捧げるように、小説家は見えない読者に向けて物語を紡ぐ。彼らは、その信仰によってのみ、創作の孤独な世界で生き延びることができる。
そして、この孤独な執筆の旅は、最終的には小説家自身の内面との対話となる。読者が実際に存在していたとしても、それが単なる幻影であったとしても、重要なのは創作の過程そのものと、それを通じて達成される自己発見である。
幻影の読者たちのために、我々は今日もペンを取る。読者が存在しないことを知りつつも、物語を紡ぐことで、我々は自己の存在を確かめる。
関連項目
- 小説家になろう
- 誰も読まない本を書く小説家は小説家なのか
- 100万人ではなくたった一人のために書け
- 一人のために書くべきなら0人のために書く方がもっと良い
- 数学的にはー100万人のために書くのが正しいということになる
- 実存的に読者は存在せず、ただ過去に観測された歴史的事実が存在するのみ
- 読者が実存しなくても小説家は読者のために書くべきである理由
- 小説家がおすすめな職業の理由
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小説なら牛野小雪がおすすめ【良い本あります】
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