『資本論』(Das Kapital)は、カール・マルクスが著した経済学および政治哲学の著作で、彼の思想体系であるマルクス主義の中核をなす作品です。第1巻が1867年に出版され、マルクスの死後、フリードリヒ・エンゲルスによって第2巻と第3巻がそれぞれ1885年と1894年に出版されました。『資本論』は、資本主義経済の構造と動態を批判的に分析し、資本主義の内在的な矛盾とその歴史的限界を論じています。
主な内容とテーマ
1. 商品と価値の理論
『資本論』は、商品の二重性(使用価値と交換価値)から出発し、労働によって生み出される価値(労働価値説)を解明します。マルクスは、商品の価値はその生産に必要な「社会的に必要な労働時間」によって決定されると主張しました。
2. 資本の蓄積と拡大再生産
資本主義における資本の本質として、マルクスは「自己増殖する価値」と定義し、資本家が労働者から剰余価値( Mehrwert)を搾取する過程を分析します。これは、労働者が生産した価値が彼らの賃金を超える部分であり、資本家によって利潤として獲得されます。
3. 資本主義の矛盾と危機
マルクスは、資本主義経済が内包する矛盾、特に資本の集中と中央集権化、生産過剰と市場の飽和、経済危機の周期的発生などを論じます。これらの矛盾は、資本主義の不安定性と崩壊をもたらすとマルクスは予測しました。
4. 労働の疎外
マルクスは、資本主義生産過程における労働の疎外を重要なテーマとして扱います。労働者は自らの労働や生産した商品、さらには自己自身からも疎外され、人間本来の創造性や自由が奪われると指摘しました。
影響と評価
『資本論』は、経済学、政治学、社会学など多岐にわたる分野において、資本主義批判の基礎となる理論を提供しました。マルクスの分析は、後の社会主義運動や共産主義運動に大きな影響を与え、20世紀の世界史において重要な役割を果たしました。しかし、マルクスの理論や予測には批判も多く、資本主義の適応性や変容能力、社会主義実験の失敗などが指摘されています。それにもかかわらず、『資本論』は資本主義を理解し、批判的に分析する上で欠かせない古典的なテキストとして、今日もなお広く読まれています。
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