アリスは夜の街をさまよい、忘れ去られた記憶のかけらを求めていた。ネオンの光がちらつき、彼女が迷路のような路地を進むたびに、掴みどころのない過去の思い出が頭をよぎる。"この場所、前にも来たことがあるような…" 彼女はつぶやくが、その声は都市の夜の喧騒にかき消される。角に立つ老人が、時を超えた物語を纏い、彼女の視線を捉える。"失われたものは、探し方次第で見つかるかもしれないね。" 彼は皮肉げに微笑み、探し求めることが必ずしも見つけたいという願いとは裏腹の結果をもたらすことを知っている。
”やぁアリス。迷子になったのかな”スーツを着たウサギがアリスに話しかけてくる。”あなたはウサギなのにどうして喋れるの?”とアリスは言う。”ここは魔法の国なのさ。ウサギだって喋るしアリスも喋る。夜は大声で騒いでいる。ぼくの声は聞こえてる?”ウサギは長い耳を横にしてアリスに向ける。”ええ、聞こえているわ。でもこの展開ってアリスの不思議な冒険みたいじゃない?”アリスはそう言ってから自分の言葉に自分で驚く。私はアリスの不思議な冒険をなぜ知っているのだろう。記憶のかけらだ。
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ウサギは時計を取り出し、焦った様子で「遅れる、遅れる!」と呟く。アリスは好奇心に駆られ、ウサギの後を追いかけることに決めた。狭い路地を抜け、古びた扉がある建物にたどり着く。ウサギは扉を開け、中へと消えていった。アリスがその扉を開けると、目の前に広がったのは無限に広がる書庫だった。天井まで届く本棚、そして中央には巨大な時計が鎮座している。"ここは記憶の図書館だよ。" ウサギが教えてくれる。アリスが求めていた忘れられた記憶は、この図書館のどこかにあるのかもしれない。しかし、無数に並ぶ本の中から一つを選び出すのは容易ではない。アリスは深呼吸をして、最初の一冊を手に取った。
”俺はデリカテッセンでヨーグルトチキンとビリヤニをたらふく食べた。店を出る時にスパイスの効いたおならがデカい音を鳴らした‥‥‥これ私の記憶じゃないわ”アリスはその本を放り投げると次の本へ”いまはもう昔になってしまったけれど戦争中に私はアラブの王子様と・・・・・私おばあちゃんじゃない”アリスはぽいっとその本も放り投げる。記憶の図書館にはいろんな人の記憶が本として残されている。もしアリスよりアリス以外の人がずっと多い。書庫は先が見えないぐらい高くまで続いている。”これぜんぶ読もうとしたらおばあちゃんになっちゃう”アリスは本を読むのをやめて書庫の上へ上へと歩いていく。
アリスが書庫の階段を上がっていくと、彼女の周りは無数の記憶が紡ぎ出す物語で溢れていた。足音は古いページをめくる音に溶け合い、彼女の心は不思議な安堵感で包まれる。頂上に辿り着くと、一冊の薄い本がひっそりと彼女を待っていた。表紙には「アリスの真実」と書かれている。手に取ると、本は自然とページを開き始める。そこにはアリスが今まで感じた喜び、悲しみ、恐れ、そして愛が描かれていた。彼女は泣きながら読み進める。最後のページには、"真実の記憶は、他人の物語に紛れても、心の中でいつも光り輝く" と記されていた。アリスは本を胸に抱き、書庫を後にした。彼女の旅は終わったのではなく、これからが本当の始まりだった。
アリスが書庫の階段を上がっていくと、彼女の周りは無数の記憶が紡ぎ出す物語で溢れていた。足音は古いページをめくる音に溶け合い、彼女の心は不思議な安堵感で包まれる。頂上に辿り着くと、一冊の薄い本がひっそりと彼女を待っていた。表紙には「アリスの真実」と書かれている。手に取ると、本は自然とページを開き始める。そこにはアリスが今まで感じた喜び、悲しみ、恐れ、そして愛が描かれていた。彼女は泣きながら読み進める。最後のページには、"真実の記憶は、他人の物語に紛れても、心の中でいつも光り輝く" と記されていた。アリスは本を胸に抱き、書庫を後にした。彼女の旅は終わったのではなく、これからが本当の始まりだった。
”アリスどこへ行ってたの?”ふとアリスが気付くとお姉さんの顔が目の前にあります。はじめは何が何やら分からなかったけれど、だんだん記憶がよみがえってきて、お姉さんとボートで湖に漕ぎ出すとだんだん眠くなってきて、お姉さんにひざまくらをしてもらって眠っていたことを思い出したのです。”あら、その本はなに?”お姉さんはアリスが胸に抱えた本に目を向けます。”これは私の真実”アリスはそう言うと本を開きます。どのページも真っ白でお姉さんもアリスも一緒になって笑います。真実は空白だったのです。
(おわり)
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