「起きたかい?」と、優しい声がする。
振り返ると、そこには銀色の髪をした、どこか不思議な雰囲気を持つ少女が立っていた。彼女の目は深い宇宙を思わせるような青さで、見つめられると時間が止まるような感覚に陥った。
「ここはどこだ?」私が尋ねると、少女は微笑んだ。
「これは『間の世界』。多くの宇宙が交差する場所さ」
「間の世界?」私は困惑する。そんな場所が本当に存在するのだろうか。
「あなたは特別な人間。だからここに来たのよ」彼女は言った。
特別な人間?私にはそんな自覚は全くない。ただの普通の人間だ。しかし、彼女の言葉には何か引き込まれるものがあった。
「あなたには使命があるの。この世界を救う使命が」
私が救う?こんなにも広大な世界を?信じられない。しかし、彼女の目は嘘をついていないように見えた。
「どうすればいい?」私が尋ねると、少女は手を差し伸べた。
「私と一緒に来て。あなたの冒険が今、始まるのよ」
その手を取る勇気が私にはあるだろうか。未知の世界への一歩を踏み出すその瞬間、私の運命は永遠に変わることになるのだろう。
しかし、彼女の目には温かな光があり、私はその手を握る決心をした。
「分かった、行こう」
私たちは光に包まれ、次の瞬間、全く違う景色が目の前に広がっていた。
「ここはなんだ」と私は言った。
「リレー小説しないと出られない部屋よ」
少女は不敵な笑みを浮かべる。
「リレー小説? どうしてそんな‥‥‥」
私は部屋を見まわす。凹凸のない白い壁が四方を囲んでいて、部屋の中央には紙とペンだけが置かれた机がある。
「しかたないじゃない。そういう設定なんだから」
「世界を救う使命があると言った」
「そう。あなたは小説の世界を救う。リレー小説で小説を続けるの」
「意味が分からない」
「あなたはどうして生きているの? その問いに答えはない。ただ生きているから生きているだけ。それと同じで小説は続いているから続いているの」
「でもどうして私が」
「あなたは選ばれたの」
「リレー小説? 君とか?」
「ええ」
「名前は?」
「小雪」
「小雪、私は絶対きみとはリレー小説しないぞ」
「ふ~ん、じゃあずっとここにいる?」
「どうにかして出られるはずだ。入ってきたんだから出口もあるはず」
「リレー小説を続けないとダメなのよ」
「それは誰が決めたルールだ?」私は彼女に挑む。
「物語そのものがそう要求しているのよ。物語は生き物みたいなもの。育てられないと枯れてしまうわ」
「でも、なぜ私が?」
小雪は深くため息をついた。「あなたは特別なんだから。特別な人間が特別な物語を紡ぐの」
「特別って、なんだよ。ただの普通の人間だってば」
「いいえ、あなたはこの物語の主人公。だからこそ、物語の続きを書く力があるの」
不安と疑念が心を支配する。しかし、同時に奇妙な好奇心も湧いてくる。この無限の物語の中で、私に何ができるのだろうか。
「リレー小説って、どうやって書くんだ?」
「心のままに、言葉を紡いでいくの。誰かがそれを読んで、次に続ける。それがリレー小説」
「無限に続く物語か…」
「そう。そしていつか、その物語は誰かの心を動かし、新しい何かが生まれるのよ」
「もしかして、これも物語の一部?」
小雪は微笑んだ。「そうかもしれないね」
不思議な感覚に包まれながら、私はペンを手に取る。そして、白紙のページに、最初の一文を書き始めた。
「ある日、私は目を覚ますと、見知らぬ部屋にいた…」
物語は続く。そして、私の冒険もここから始まるのだ。
(おわり)
小説なら牛野小雪【kindle unlimitedで読めます】
牛野小雪以外の本を読むなら
kindleストア トップページ
kindle unlimitedトップページ
Amazon 本 トップページ
小説なら牛野小雪【kindle unlimitedで読めます】
牛野小雪以外の本を読むなら
kindleストア トップページ
kindle unlimitedトップページ
Amazon 本 トップページ
コメント