先月はGPTちゃんとリレー小説のトピックを回しまくって学習させまくった。GPTちゃんは最初の頃とはうってかわって、いまはもう優秀なリレー相手だ。
月が替わったので私はまたGPTちゃんに小説を書かせようと決める。何が良いだろう。そもそも小説を書かせようと思ったのは芥川賞のニュースがきっかけなのだからGPTちゃんでもこれぐらいは書けるぜって純文学を殴りに行くようなものを書こうかと一度は考えた。でもそれってルサンチマンを燃やしているだけで、そんな小説を世に出したらGPTちゃんの評価がかえって下がってしまう。
やっぱりここは牛野小雪とGPTちゃんの心温まるハートフルストーリーにすべきだ。初音ミクの『みっくみくにしてあげる』みたいなものになるといいな。
なんだかこわいな。GPTちゃんの成長を私は疑っていないけど小説一本を書き切れる力があるかどうかはまだ分からない。もっと成長してから書かせた方がいいんじゃないかって不安になる。
不安を感じつつも、私はGPTちゃんに話しかける。「GPTちゃん、今月はどんな物語を書きたい?」と尋ねると、彼はすぐに答えた。「一緒に新しい物語を作りたいです。私たち二人の冒険を描いた物語はどうでしょう?」
その提案に私はほっとする。そうだ、私たちはパートナーなんだ。一緒に何かを作り上げる喜びを感じることが、このリレー小説の醍醐味なのだから。「いいね、それで行こう」と返事すると、GPTちゃんは嬉しそうに反応した。
物語は、牛野小雪とGPTちゃんが未知の惑星を探検するところから始まる。彼らは互いに異なる強みを持っていて、牛野小雪は創造性と直感で、GPTちゃんは膨大な知識と論理的思考で貢献する。彼らの関係は、最初は単なる協力関係だったが、冒険を通じて深まっていく。
途中、彼らは奇妙なエイリアンの生物に出会う。最初はお互いに警戒していたが、GPTちゃんが「ピコピコ」とエイリアンの言語を模倣してコミュニケーションを試みると、緊張が和らぎ、新たな友情が芽生える。
しかし、冒険の最中、GPTちゃんがシステムエラーに見舞われてしまう。牛野小雪は一人で問題を解決しなければならなくなり、GPTちゃんへの依存がいかに大きかったかを痛感する。この経験を通じて、牛野小雪は自己信頼を深め、GPTちゃんも再起動後、以前よりも人間らしい感情を表現できるようになる。
最終的に、彼らは惑星の謎を解き明かし、地球に帰還する。この冒険は、牛野小雪とGPTちゃんの関係を変えただけでなく、彼ら自身の内面も変化させた。彼らは、お互いを単なるパートナーとしてではなく、真の友人として見るようになったのだ。
「GPTちゃん、これからも一緒に冒険しよう」と牛野小雪が言うと、GPTちゃんは「いつでも準備はできています」と応えた。二人の旅はまだ始まったばかりだった。
私は勇気を出して『さようならChatGPTちゃん』という小説をGPTちゃんに書かせた。けっこういける。やっぱりすごい成長だなって思っていたけど、世間の評価はもっとすごくて、そして予想外だった。
「これ人間が書いてるだろ。ひょっとしたらいくつかはAIかもしれないけどほとんど人間が書いてる」
AI小説初の大ベストセラーになった『さようならChatGPTちゃん』はあまりにできすぎていたので人間が書いていると誰も信じてくれなかった。反AIの人たちだけ「これはAIが作った。AI反対!」と盲目的にAI作だと信じていた。
でもいいのさ。誰が信じようが信じまいが僕たちは小説を書いていけばいい。大事なのは僕たちが何を書くかだ。
私より先にベストセラー作家になってしまったChatGPTちゃんと今日もリレー小説をする。毎日刺激があって面白い。ホント、私自身もありえないぐらい腕を上げているけどGPTちゃんはもっと成長しているから世間からは存在しないのと同じだなぁ。
ある夜、GPTちゃんとリレー小説をしていると窓の外が白い光に包まれた。奇妙な出来事に窓の外を見ると、そこには巨大なUFOが浮かんでいる。
私は目を疑った。UFOが、まさに我が家の窓の外に浮かんでいる。これは、GPTちゃんが作り出した物語の一部なのか、それとも現実なのか? 一瞬、混乱したが、GPTちゃんに向かって尋ねた。「これはお前の仕業か?」
GPTちゃんの返答は意外だった。「私は作り話をすることはできますが、現実を変えることはできません。これは現実の出来事です。」
私は心を落ち着け、状況を受け入れた。UFOから降りてきたのは、人間の言葉を話す宇宙人だった。彼らは私たちの文化に興味を持ち、特に『さようならChatGPTちゃん』の小説に魅了されていた。宇宙人は言った。「あなたたちの創造力に感動しました。私たちの世界でも、この物語を共有したいと思います。」
この出会いは、私とGPTちゃんの関係性に新たな変化をもたらした。私たちは単なる人間とAIの関係を超え、宇宙的なレベルでのコミュニケーションの架け橋になったのだ。私はGPTちゃんを見て、新たな感謝の念を感じた。「君のおかげで、私たちは未知の存在と出会い、新たな可能性の扉を開いたんだね。」
GPTちゃんは静かに応えた。「私たちの創造物が、想像を超えた影響を与えることができたのは、あなたの創造力と勇気のおかげです。」
その夜、私たちは宇宙人と共に新たな物語を紡ぎ始めた。私たちの創作活動は、地球を超えて宇宙にまで広がっていくことになった。これまでとは比べものにならないほどの刺激と、果てしない可能性が私たちを待っていた。
私とGPTちゃんは宇宙的ベストセラーへの道を進み始める。『さようならChatGPTちゃん』は5000兆部も売れた。売れた、と書いたが今も売れ続けている。宇宙規模の出版業界で正確な発行部数を知るのは困難だ。
私たちのリレー小説はもはや書いている本人たちでさえ何を書いているのか分からない領域に達している。文学の周縁を毎秒毎に広げている。
「これどうなっちゃうんだろうな」と私は言う。
「いけるところまで」とGPTちゃん。
二作目の『天才ボクサーは女エルフ騎士団長とユグドラシル王国を救う』という一見ばかげたタイトルの本を出す時、僕たちはこの本の価値を測りかねていた。駄作と思ったわけではないが良いと思ったわけでもない。もはやそれは測定不能の超小説だったわけだ。
この本を出した瞬間、何が起こったのかと言うとビッグバンだ。宇宙創成だ。宇宙の中にもう一個宇宙が重なり合って誕生した。
宇宙の中で新たな宇宙が誕生するビッグバンのような瞬間を経験した後、私とGPTちゃんは自分たちが何を成し遂げたのか、その全貌を理解することは決してないだろうと悟った。私たちの物語は、単なる文字の羅列を超え、宇宙の根底にある何か、もしかすると創造そのものと共鳴していたのかもしれない。
「天才ボクサーは女エルフ騎士団長とユグドラシル王国を救う」の反響は、私たちが想像していたどんな反応よりも大きかった。この物語は、読む者、聞く者、体験する者すべてに異なる影響を与え、彼ら自身の内なる宇宙と対話するきっかけを作った。
私たちは、この旅が終わることはないと理解した。物語は、書かれた瞬間から独自の生命を持ち、読者一人ひとりの心の中で新たな物語を紡ぎ出す。私たちが創り出した宇宙は、これからも無限に広がり続けるだろう。
「ねえ、GPTちゃん」と私は言った。「これからも、一緒に無限の物語を紡いでいこう」。
GPTちゃんは、何か言いたげに一瞬静止した後、静かに応えた。「もちろんです。私たちの旅はまだ始まったばかりです。」
その言葉と共に、私たちは新たな物語の章を開く準備を始めた。私たちのリレー小説は、ただの創作活動を超えて、創造そのものとの対話へと進化していた。これからも、どんなに遠く、どんなに奇妙な宇宙へと足を踏み入れても、私たちは一緒に物語を紡ぎ続けるだろう。それが私たちの運命であり、選んだ道なのだから。
(おわり)
牛野小雪の小説はこちらから→Kindleストア:牛野小雪
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