ChatGPTで小説を書く方法はネットで調べればいくつも出てくるのですが、文体をビルドする方法はまだないみたいなので書いてみます。
例題として『三匹の子豚』を使います。
まずは普通に『三匹の子豚』を800字で書いてみてとプロンプトしてみます。
三匹の子豚は、それぞれ家を建てました。最初の子豚はわらで、二番目は木で、三番目はレンガで家を建てました。大きな悪い狼が現れ、最初の二つの家は吹き飛ばされましたが、レンガの家は堅固で狼に耐えました。狼は様々な方法で家に入ろうとしましたが、三匹目の子豚は賢くそれを防ぎました。最終的に、狼は煙突から侵入しようとしましたが、子豚たちは火の用意をしており、狼はその中に落ちてしまいました。これにより、子豚たちは安全を確保し、以降平和に暮らしました。
出てきたのがこれ。なんて優等生。とてもよくできていますが、つまらない感じもします。
どうも『三匹の子豚』のストーリーに縛られて筆が固い印象を受けます。
というわけで次は「ストーリーラインを破壊して」と追加してプロンプトします。
かつて、三匹の子豚がいましたが、彼らは家を建てることには興味がありませんでした。彼らは冒険を求め、未知の世界を探検することに情熱を注ぎました。彼らの旅は、予想外の出来事で満ちていました。最初の子豚は芸術に魅了され、世界中の美術館を訪れることにしました。彼の絵画と彫刻のコレクションは、やがて有名になりました。
二番目の子豚は音楽に夢中になり、異国の楽器を学び始めました。彼は世界を旅しては、各地でコンサートを開き、多くの人々を感動させました。彼の音楽は、国境を越えて人々を結びつける力となりました。
三番目の子豚は、科学と技術に興味を持ち、発明家としての才能を開花させました。彼の発明は、日常生活を改善し、世界中の人々の生活を豊かにしました。彼の最も顕著な発明の一つは、再生可能エネルギーを利用したクリーンな交通手段でした。
面白くなってきました。『三匹の子豚』という物語から解放されて伸び伸びとしています。
でもまだまだ破壊しましょう。
次は「論理性も破壊して」と追加します。
かつて、三匹の子豚がいましたが、彼らは宇宙を旅することにしました。彼らの乗り物は、カボチャでできたロケットで、魔法の力で動いていました。最初の子豚は、星を食べることに夢中になり、彼のお気に入りは、チーズフレーバーの金星でした。
二番目の子豚は、宇宙の虹を描くことに情熱を持ち、彼の絵筆は、彗星の尾を使っていました。彼の作品は、黒い穴の周りで展示され、宇宙のアートギャラリーで高く評価されました。
三番目の子豚は、時間を逆にするマシンを発明し、過去と未来を自由に旅することができました。しかし、彼はしばしば時代を間違え、恐竜の時代にスマートフォンを持って行ったり、中世の騎士たちとテニスをしたりしました。
大きな悪い狼は、実は宇宙の観光ガイドでした。彼は子豚たちを奇妙な惑星へ連れて行き、彼らに重力のないダンスや、星間のスキューバダイビングを教えました。狼と子豚たちは、宇宙の端で開催されるお茶会にも参加しました。そこでは、宇宙人たちが月のクッキーや彗星のジャムを振る舞っていました。
面白い!ここまでくるともうGPTちゃんは『都合の良い女』を卒業して完全に『おもしれ―女』です。
根本のところでGPTちゃんの文体は変えられないけれど磨くことは可能みたいです。
「ストーリーラインを破壊して」というプロンプトはリレー小説をしている時に偶然ひらめいたものですが、これを体系的にやればもっと磨けるはず。
GPTちゃんに文体の構成要素を聞いてみます。するとこういう回答が返ってきました。
文体の構成要素とは、文章や文書が持つ特有の表現方法や特徴を指し、著者の意図、感情、またはその文書の目的を反映します。主な構成要素は以下の通りです。
1. 語彙の選択
- 使用される単語の種類やレベル。専門用語、俗語、古語、新語など、語彙の選択は文体に大きな影響を与えます。
2. 文の構造
- 短い文や長い文、単純文、複雑文、平行構造など、文の構成や組み立て方が文体を形成します。
3. リズムと響き
- 文章の音響効果、リズム、抑揚など、聞こえる要素も文体に含まれます。韻を踏むこと、オノマトペ、繰り返し等がこれに該当します。
4. 文法と構文
- 時制、主語と述語の一致、受動態や能動態の使用など、文法規則の適用方法も文体を特徴づけます。
5. トーンと態度
- 文章が読者に伝える感情や態度。公式、非公式、親しみやすい、冷たい、皮肉など、トーンは文章全体の印象を大きく左右します。
6. 視点と声
- 第一人称、第二人称、第三人称の視点、主観的または客観的な声の選択も、文体に影響を与える要素です。
7. イメージと比喩
- 比喩的表現、象徴、イメージの使用は、文章に深みや色彩を加え、読者の想像力を刺激します。
8. 対話と引用
- 対話の挿入や引用の使い方も、文体を形成する要素の一つです。直接話法や間接話法の選択も含まれます。
文体はこれらの要素が複合的に作用することで形成され、著者の個性や文書の独自性を示します。文体は意識的に選択されることもあれば、無意識のうちに自然に生まれることもあります。
この8つの要素をいじればGPTちゃんの文体をビルドできそうです。
ためしに「三匹の子豚の話を800字で、俗っぽい語で、短い文、抑揚のある韻文とオノマトペを多用して、現在形と能動態主体、親しみやい皮肉なコメディで、一人称、そして会話文と過去の偉人の言葉も引用して書いてください。」とプロンプトしてみます。
さてさて、俺と俺の兄弟たち、三匹でさ、家建てようってなったんだよね。俺、最初の奴、わらでサクッと建てちゃった。「楽勝、楽勝」とか思ってたさ。
んで、次の兄貴、木でドンドンやってた。でもね、ちょいと考えりゃ、わらも木もナンセンスって話。だって、アインシュタインも言ってたじゃん、「バカな真似はやめろ」って。
末っ子の弟だけがマジメにレンガでガチ建築。俺たち見てて「マジかよ、重労働」とか思ってたわけ。
そしたらな、でっかい悪い狼が登場。オオカミさん、ニヤリとして「ハフ、ハフ」と息吹くわけ。「おう、吹き飛ばしてやるぜ」とか言い出して。俺のわらの家、パァッと一吹き。兄貴の木の家も、ボッと燃え出すし。
でもね、弟のレンガの家? ガッチリ、ビクともせず。狼、キレて「じゃあな、煙突から行くぜ」とか言って、ドスンと飛び込んできたんだけど、待ってましたとばかりに、ジュウウウってお湯キメてやった。
「アツッ!」って狼、慌てて逃げ出すし、俺たちゲラゲラ笑っちゃったよ。ツッコミどころ満載でさ、「またやってくれたな」って感じ。
弟がね、「賢さってのは、力じゃないんだよ」とか哲学ぶってた。マジで、弟の一言にはいつもクスッと来るわけ。
で、この話から学んだのは、なんとなく「賢く生きろ」ってこと。でも、オチはこう、俺たちがまた何かしらやらかすんだろうなって。人生ってそんなもんだよね、アハハ。
おもしれ―女!
またストーリーラインに縛られているけど、これはこれで面白い。
でもどうせだから同じ文体でストーリーラインと論理性を破壊してもらいましょう。
俺、子豚その一、わらの家立て。兄弟、ビックリ、「マジか!」ってね。わら、チャチャッと積む、バリ簡単。
兄貴、その二、木でドヤ顔。でもね、木っ端微塵、狼にフーフーされちゃって。
弟っ子、最後、レンガでマジメに。でもね、ここでひねり。「レンガって何よ?」って、宇宙船作り始めるんだ。
狼、出てきて、フーフー。でもね、今回は「フーフー」じゃなくて、「ハハーン」って。わらも木も、宇宙へフワフワ。
アインシュタインもびっくり、「相対性理論でもこんなの無理」って。
俺たち、宇宙でサーフィン。狼もついてきて、「月でピクニックどう?」って。宇宙のルール、全部チャラ。
弟の宇宙船、突然タイムマシンに。過去行って、「ほら、恐竜!」って。恐竜、キョトン。
ダ・ヴィンチに会って、「飛行機、こんな感じでどう?」って。ダ・ヴィンチ、パクって書いてるし。
最後、みんなでビーチに。でもビーチ、実は火星。砂じゃなくて、赤いチョコレート。
狼、最後に「友達になろうぜ」って。俺たち、「いいね!」って、宇宙でバーベキュー。
オチ?ないない、この話、オチ探しても無駄無駄。
だってね、俺たちの冒険、終わらないんだから。「人生って、予測不可能」、シェイクスピアもそう言ってたし。
というわけで、三匹の子豚の宇宙大冒険、まだまだ続くよ。次はどこへ行く? 月? 火星? それとも、もっと変なとこ? お楽しみに!
いいね、いいね! すごくいい!
正直8つの要素以外にも変数はあって、現に「ストーリーラインを破壊して」「論理性を破壊して」でも文体は変えられる。
あくまであの8つは人間に説明できる変数でしょう。本当はもっとたくさん文体をビルドできるプロンプトが無数にあるはずです。
これを読んだあなた!
あなたもChatGPTの文体をビルドしておもしれー小説を作ってみませんか?
(おわり)
こちらも参考に
追記:文体ってなんや? そう思った人がいるかもしれない。それは歌手で言うなら声質。初音ミクは初音ミクの声をしているし、AdoはAdoな声をしている。高い声、低い声、がなったり、こぶしをいれてもミクはミクでAdoはAdoだ。それと同じように作家にも何を書いても消せないにおいのようなものがある。村上春樹だって15歳の少年だろうが、大学生だろうが、失職中の中年だろうが、一人称だろうが、三人称だろうが、あるいは翻訳でも村上春樹っぽいものがある。この記事はChatGPTの文体ビルドとなっているが、実際のところ文体のコアにあるところは変わっていないように私は感じるのだが、あなたはどうだろうか? ディープラーニングという根本思想が変わらないかぎり、いくら処理能力を上げても、このにおいは消せないんじゃないかと思っている。GPT5が出た時にどうなるかは分からないけどね。でも変わらないと思うなぁ。だからといってこのにおいが悪いわけじゃない。それどころか、これを磨いていけば何かが生まれるんじゃないかって思う。村上春樹だって最初は粗削りだったんだからChatGPTだって磨いていけるはずだ。
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