年末から毎日ChatGPTとリレー小説していたのだがもう飽きてしまった。三日坊主は乗り越えたが十日はもたなかった。

理由としてはChatGPTのストーリーラインが透けて見えるようになってしまったこと。

・なんらかの本や言葉に出会ってファンタジーが始まりそう
・まぶしい風景の中で男女が出会うボーイミーツ系
・誰かがいなくなる、あるいは何かがなくなっているサスペンス

細かいところは違っても、この三つがChatGPTが出してくるストーリーラインだ。

あれ、これってkindleストアで文学とは独立してジャンルが存在しているファンタジー・SF・ロマンス・サスペンスじゃん。kindle本を出したらまずジャンル変更しろっていうのが定石だったしAIは正しい。

じゃあこっちからストーリーライン出せってことだけど、そうするとGPTちゃんはオウム返しや概要や解説を吐き出すようになってしまう。牛野小雪が先に書いたバージョンだとリレーするたびに3回ぐらいガチャを回している。多い時では10回以上やったこともある。

色々意見はあるだろうけれどChatGPTは答えを出すアルゴリズムであって創造性を広げるためのツールではないと私は認識している。正解はくれるけれど成長はさせてくれない。正解の鋳型から外れたものをGPTちゃんは認めてはくれるけれど伸ばしてはくれない。「うん、うん、そうだね。それって面白いね。君ってすごい独創的だと思う。ところでこんなのがあるんだけど」と正解へ誘導してくる。

どうして生成AI美女の写真集があふれているのか考えたことがある。まず生成AI以前から写真は加工が当たり前だったからああいう非現実に整った映りに抵抗がなくなっていた。それとやはり最大公約数的な需要を満たしていること。AI美女が100点という人はそういないとは思うが90点は超えていると感じる人が90%はいるはず。だからトップは取れなくてもそれ以下の領域はすべてAIが占領してしまう。

いまのところAIは人間のデータを必要としているので人間を超えることはありえないが、技術が発達していくほどにトップ以下のAI領域はどんどん広がり、ごくごく薄いトップ領域で人は戦うことになるんじゃないかな。

それは小説で言うなら小説全体のトップではなく、たとえば才能以外は全てポンコツの人としておわっている天才と、なんでもそつなくこなせるが天才に劣等感を抱いている秀才を書いたジャンルのトップみたいな狭い領域での戦いになるのではないか。それ以下はすべてAIに占領される。

そもそもの話でいえばAI以前から小説全体に影響力を持つトップ作家なんて存在していなかったわけで、なろうとSFと純文学なんてそれぞれ違う文化を持っていたし、それは野球と卓球と棒高跳びの選手はみんなスポーツ選手だが、それぞれ違う文化を持っているようなものと同じだ。AIによって細分化はさらに加速する。世界の大きさは変わらなくても世界の数は増える。天才の数も増えるはずだ。

それはきっと多様性あふれる世界だ。今の時代から見ればこんな個性的な人ばかりでどうやって社会が回っているんだろうと不思議になるぐらいだろう。人それぞれの個性が尊重される時代が来たなんて言われているかもしれないが、その個性はありのままの自分ではなく自分の個性をAIが捉えきれないレベルまで磨かなければならないので言葉ほどユートピアな世界ではない。

自分のままでいるには自分の天才にならなければならないが、そこまで自分と向き合えるほど人は強くないと思う。みんな最高の自分じゃなくて最高の誰かになりたいんじゃないか? Every Little Thingの歌で「いつか最高の自分に」という歌詞があるが続くのは「生まれ変われる日がくるよ」なので、やっぱり今ここに存在する自分ではない別の誰かにみんななりたいんじゃないかな。夢とか希望を思い浮かべている時もそこにいるのはここにいる自分ではないはずだ。

生成AIの小説がなぜ氾濫しないのか。写真集は表紙を見れば中身も予想がつくが、小説は読んでみるまで分からない。だから小説を生成しても商業的うまみがない。うまみがないから小説生成をする人も少なくプロンプトの研究もされない。

じゃあそのへんの問題が解決されたら生成AI小説が氾濫するか? それもどうかな。写真集は10分もあれば全部読めてしまうが小説は固い本なら10時間以上かかる。柔らかくても半時間だ。負担の大きい媒体なのでトップオブトップしか読まれないのではないか。それで考えると小説をAIに読ませて新しいジャンルを言語化してもらう方が面白いかもしれない。

というわけで『バナナランド』がどういうジャンルになるかGPTちゃんに判断してもらった。もちろんSFが最有力候補なので、それはナシで新しいジャンルを作ってくださいってお願いすると『バナナランド』は哲学的風刺小説と出た。twitterで検索しても出てこない。よっしょあ!ワイは哲学的風刺小説でてっぺん取ったるでぇ!と舞い上がったがGoogle検索するとヴォルテールの『カンディード』という小説が哲学的風刺小説らしい。ヴォルテールって思想家じゃなかったのかよーーー!

哲学的風刺小説はすでに存在するので別のジャンルをお願いします。とGPTちゃんに頼んでみたが、どんどんバグり始めたので中止。新しいジャンルを作るのって難しい。これはもうヴォルテールを倒すしかないぜ。

(おわり)

追記:GPTちゃんは私との会話を学習したからお粗末なストーリーラインしか出せないのかもしれない。ということは彼女は私を救うエンジェルなのか!?

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