今年の春からカボチャとスイカの苗を育てていた。本来はどちらも広い平地を使って育てるものだが支柱を立てて育てれば狭い土地でも育てられるというので早速試してみた。するとカボチャのつるがどんどん伸びていき、立てた支柱では高さが足りなくなったので軒に紐を結んで支柱と結びつけた。それでもカボチャの勢いは衰えず、ついには屋根より高く伸びた。

どこまで伸びるのだろうとネットで調べると5mは伸びると書いてあった。どうりで屋根より伸びるはずだ。それに病害虫にも強いのでもりもり育つらしい。一緒に植えたスイカはほとんど伸びることができずに、細いつるを影に落としている。

どうせ植えていても養分を取るだけだからスイカの苗を切ろうかと考えていたが、それも面倒なのでずるずると日を過ごしているうちに台風がやってきた。台風が去ると屋根より高く伸びたカボチャは低い位置の葉を残して全部ちぎれてしまった。残った葉でどうにかなるかと見ていたが結局枯れて駄目になった。

カボチャの苗は処分して、そこに丹波黒豆の種を播いた。もう3代目なので徳島黒豆と呼んでもいいかもしれない。普通の豆はだいたい2代目で弱くなり3代目で芽が出なくなるが、黒豆は原種に近いのか勢いは衰えない。というより土地に馴染んできた。播いて二日後に全ての種から新芽が出て、一週間もしないうちにすねの高さまで伸びた。

今年は黒豆の年かなと見ていたが、カボチャが消えた真空地帯に少し前までなりを潜めていたスイカがつるを伸ばしてきた。すると黒豆は日陰者になり、成長を止めてしまった。マメ科の根には根粒菌があって、土に窒素を固定してくれるからこのままでもいいかと思っていると、また台風がきた。今回はかすめただけだが風は強かった。次の日にスイカを見ると、ほとんどの葉が駄目になっていた。

カボチャと違ってスイカは枯れることはなかったが、再び勢力を盛り返すより先に黒豆が大きく育ってしまった。今はスイカが日陰者となり地面に近いところで、つるを伸ばせないでいる。葉も小さいようだ。たぶんもう実ることはないだろう。

黒豆には紫と白の花がたくさん咲いた。アシナガバチが近くを飛んでいたので実付くに違いない。でも、どれだけ実ったところで結局は牛野小雪が塩茹でにして食ってしまうのだ。一番良く育った物は種をとって保管されるが、それだって早いか遅いかの違いで結局は胃袋の中だ。裏庭の勢力争いに勝っても結局は滅びが待っているわけで、ちょっと寂しい気がする。

黒豆君達が勝利の存在しない裏庭で生きていくこと考えると少し背筋が寒くなる気がする。それでも丹波黒豆の塩茹では美味い。スイカは実り損ねたがカボチャはひとつだけ収穫した。こちらは薄く切ってカリカリに焼き、これまた塩で食うつもりだ。これもまた美味い。牛野小雪は食ってばかりいるが、誰に食われるのだろうか? そもそも食べられるのか? その辺のところはまだ分からない。

 

(おわり)

 

(2015年8月30日 牛野小雪 記)