マンガやテレビの中で作家はたいていスランプに陥っている。
何かを創ろうとするならたいてい誰もが一度は陥るもので、たとえ準備万端で『これで書けなきゃバカだぜ』という状態でも起こりうる。たいていの場合以下の状態を段階的に通過していくようだ。
1.否認
2.怒り
3.取引
4.抑鬱
5.受容
もちろんスランプに陥った作家がこの過程を全て通り過ぎるわけでもなく、5.受容の段階に至った作家が1や3の段階に戻ってくることもあり、途中の段階でスランプから抜け出すことも珍しくない。またどの段階においても作家は、もしかするとどうにかすればまた書けるようになるのではないかという希望を抱いている。それは5.受容の段階に至ってもそうだ。
1.否認
書けるはずの物が突然書けなくなる。もしくは非常に僅かな量しか書けないか、納得のいかない物になっている。この段階ではまだスランプと認識されていることは少なく、たいていは、昨日夜更かししたからとか、気持ちが乗らなかったから、と理由づけする。この段階でスランプを脱した場合、次の日で遅れを取り戻すことが多い。
2.怒り
スランプがはっきりと認識され始めた段階。頭では理解しているが感情的には受け入れていない。『私にこれが書けないはずが無い』『最近の私は怠けている』と自己に怒りを向けることもあるが、『誰かが私の邪魔をしている』と周囲に怒りをぶつける作家も少なくない。本当の自分はまだ書けるはずだと思っているので、ここで無理をする作家が多い。この段階でスランプを脱した場合、無理をすれば書けるという信念を抱くことが多い。
3.取引
理由が分からず、どれだけ力を振り絞っても書けないことが分かり感情的にもスランプを認識する。もう書けないと分かっていても、どうにかすれば書けるのではないかと模索する。『豆腐毎日一丁を食べれば書けるようになる』『夜11時に眠れば生活習慣が改善されて書けるようになる』『木刀を休まずに二千回振れば書けるようになる』『部屋を片付ければ書ける』などと自分が普段とらない行為に願を掛けることが多い。この段階でスランプを脱すると、願掛けに成功した行為がジンクスとして保持される。
4.抑鬱
ジンクスも破れ、スランプからも脱することができない状態が続くと、作家は執筆から距離をおくようになる。『これを書くには未熟すぎた』『小説とは何か』『どうせ誰にも読まれない』『別に私が書かなくったって世の中には本があふれているじゃないか』『そもそも面白いのか?』と執筆の本質について考え始める。何度か試すように執筆へ戻ることがあるが、そこで失敗を繰り返すと次の段階へ移行する。この段階まで至った場合スランプを脱してもあとに引きずることが多い。
5.受容
長期に渡るスランプにより『書けない物は書けない』と完全に認識した段階。『どうせダメさ』と作家は執筆行為から完全に自己を切り離し、これまで執筆に向けていた時間を別のことに費やす。信長の野望で三好家天下統一を目指したりするのもこの時。それでも心の中では執筆のことを完全に忘れたわけではなく、大量の無為の時間を過ごした後にその代償として執筆行為に戻ることがあり、それがスランプ脱出のきっかけとなる。
ちなみにスランプ脱出は段階的に起こる事もあるが、1~3の段階ではいきなり普段通りに戻ることが多い。4、5の段階まで進行した場合、作家は取り戻した調子をすぐには信じることができず、初めは試すように執筆へ戻ってくる。それがうまくいくと、そこから一歩ずつ確かめるようにして徐々に調子を取り戻すようだ。
だいたいみんなこんな感じだろう?
(2015/08/04 牛野小雪 記)
追記:あれのパクリだって分かってもみんなには内緒だ。
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