CDが売れないとは今さらな話だが、私がこれからするのはみみっちい話。これを参考にしたからといってCDがまた百万枚売れるようにはならないと思うが、一枚ぐらいは積み増せるかもしれない。

 

 最近ラジオや有線で西野カナの歌がよくかかっている。

“もしも、神様がいるのなら~♪ 運命の人がいるのなら~♪”

なんか昔に聞いたことがあるような気がするんだけど気のせいだろうか。とにかくその歌を聞かない日はないのだが、未だに題名を知らない。前に出していた“ああ なんで すきぃ~になあっちゃったの~かな~♪”っていう歌もよく聞いていて、良いなぁと思っていたのだが、これもやはり題名を知らない。

 

近所の本屋はCD屋が併設というよりは一体化していて、本とCD、あと文房具が買えたりするのだが、その店にいるとちょうど冒頭の歌が聞こえてきた。

 その時はちょうど新しいボールペンを買おうとしている時で、頭の中はお金を使うモードになっていたわけだ。それで、その歌のCDも買ってみようかなと西野カナの棚まで行ったわけだが、そこではたと気付く。これって何ていう題名の曲だ?

 

 西野カナの棚にはCDがいくつか入っている。でもどれが今聞いている曲か判別できない。『新曲!』とラベルが貼られている物もない。結局、私はその歌を聞き終わるとボールペンと本を一冊買って(CDを買うつもりだったのに買えなかったから、何だか千円ぐらい使いたい気分だったのだ)、店を出た。

 

 会いたくて会えなくて震えるので有名な歌は持っている。題名も知っている。『会いたくて 会いたくて』だ。ああ、なんで知っているんだろう。

いつ出たのか調べてみると2010年5月19日。このとき私は何をしていたのだろう。毎日、日記をつけていると、こういう時に便利だ。

 

 最初に開いたページでぎょっとした。4月28日はエイジオブエンパイアをやっていて、そのことについてノート4ページに渡り、ぎっしりと文字が書き込まれている。その前後もけっこうな量で書いてある。そのあとベヨネッタでゴールドは取れるのにプラチナが取れなくて苦しんでいたようだ。結果は書いていないが、プラチナコンプリートはできなかった気がする。

 

 おっと、過去に浸っている場合じゃない。

2010年5月19日。……前日まではびっしりと書いているが、ちょうど19日から気持ちがBADだったらしい。YJを立ち読みして、汗がだらだら出てきた。油とり紙が欲しいとだけ書いてある。……いや、発売日に買ったわけじゃあるまい。もうちょっと読み進める。

 

 

結局のところ、私がいつ買ったのか分からなかった。そもそも2010年に買ったのかも思い出せない。いつ買ったんだ? CDジャケットからニョキッと足が生えて、枕元に飛び込んできたわけじゃあるまい。でも、買ったことは覚えている。確かに私は会いたくて震える曲だと、『会いたくて会いたくて』だと知ったうえで買っていた。

 

 最近の曲の題名を私は知らない。でも流れてくれば聞いたことがある。実はみんなもそうで、曲は知っているが題名を知らないだけだったりして。

 昔はCMや音楽番組でCDの宣伝をしていて、歌手やバンドの新曲の題名やフレーズ、CDジャケットまで知っていた。でも今知っているのはフレーズだけ。こんな少ない情報でわざわざCDを買いに行こうっていう人が逆に珍しいだろう。よっぽど熱い理由が無ければならない。

 

 王木亡一朗の『ティアドロップ』にサニーという女の子が昔聴いた曲を探すというくだりがある。彼女は喋ることができないので、彼女と筆談しながらその曲を探さなければならない。なんでそこまでする必要があるのか?

彼女はあるカルト教団の施設でひどい虐待を受けながら育ったのだが、そこから救出されたときに車の中で聞いた曲が頭に残っていて、それをもう一度聴きたいというドラマチックな理由がある。理屈じゃ説明できないけれど、まぁ気持ちは分からなくもない。

 彼等はそこから題名も知らない、歌詞も分からない、分かっているのはメロディだけで、しかもそのメロディーはサニーという女の子の中にだけある状態で曲を探すわけだ。

 

 そんなドラマチックな動機がない私達はどうやって題名を知らない曲に辿り着けばいいのか? CDジャケットも知らない。CDが売れないのは単純に宣伝不足が原因なんじゃないか? たとえば上の例でいえば、たぶんこれは西野カナの新曲だろう。だったら店の壁にポスターでも貼っておけばいいのに。もしくは歌を流し終わった後は必ず題名とアーティスト名を教えるとかさ。ファンや、ギョーカイ人なら知っていて当然かも知れないけれど、それ以外の人は知らないのが当然。少なくともそれで一枚分の商機を逃している。
 まぁ、このご時世だからCD販売で儲けようとは思っていないのかもしれないけど。

 

 [2015/07/27 牛野小雪 記]

 



追記:西野カナも良いけど、前にコカコーラのCMで流れていたゲスの極み乙女の“わたしいがい わたしじゃないの”っていう歌も良かった。題名は知らないけどね。でも何故かバンド名だけは何故か知ってる。顔も知っている。めざましTVに出ているのを見た。ボーカルは男だったのか! と驚いた記憶がある。ちなみにその時までゲスノキワミオツ、オトメだと思っていた。どこからオツが出てきたのか……。

 

追追記:これを書くついでに調べた。

西野カナの歌は『もしも運命の人がいるのなら』『Darling』

ゲスの極み乙女。は『私以外私じゃないの』だ。

どちらもAmazonで売ってる。


追々々々記:アメリカの方では、もうダウンロードじゃなくてストーリーミング再生の聴き放題に移行しているそうだ。1回の再生で1セント以下の利益しかでないから、数をこなせる一部のアーティスト以外は生活できないってさ。でも、少し前にテイラー・スイフトがアップルと揉めるているのがニュースになっていた。どんなアーティストも無理なんじゃないか?
 そういうサイトは基本無料で広告を出す形で金を得ているんだが、ある会社は完全定額サービスにしてできるだけアーティストに還元することを目指しているらしい。どうなるかな?
 本の世界でも電子書籍が充分に普及したらいつかはこうなるだろう。アーティストにはライブがあるが、作家はどうなるんだろう。
 



ときどき自著の宣伝もしとかなきゃな。一応小説家なんだから。

 

 


最後に


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