題名:神になったお客様
作者:T・S・カウフィールド


   騒がしい店内。側を通りかかった店員を客Aが引き留める。


ー客A おい、兄ちゃん! いつまで待たせるんや!

ー店員 申し訳ございません

ー客A 客は神様やろうが! それをこんなふざけた対応で済ませてええと思とるんか!?

ー店員 現在大変込み合っておりまして。ご迷惑をおかけいたします。 

ー客A 謝ってくれんでもええんや! あっちの客はワイより後に来たのに、先に食べよるぞ! どういうことや! ワイを忘れとるんちゃうか!?

ー客 大変申し訳ございません。お客様のDX天ぷら定食は少々お時間をいただくことになっております。

ー客A もう、タイムオーバーや! ほれが神様に対する態度か! 他の客はどうでもええ! ワイのを先にしてくれや!

ー客B ほう、神様ですか。あなたはどちらの神様でございますか?

ー客A なんや、あんたは?

ー客B 珍しいと思いましてね。神様といえば姿を見せず、声も出さず、我々がお供えしたものを静かに召し上がるものとばかり思っておりました。日本は八百万の国と言うし、実際に姿を持って怒鳴ることもあるようで、なにぶん世間知らずで存じ上げておりませんでした。


   客B手を合わせて客Aを拝む


ー客A ・・・・・・・そこまでせんでもええわ。もう分かったわ。兄ちゃん、悪かったな。けど、はよ、持ってきてな。美味いの頼むで。ワイは神様なんやから。

ー店員 はい


 客Aの頼んだものがくる。客Aはそれを食べ終わるとレジを通りすぎようとする。店員慌てて駆け寄る。客Bもちょうど食べ終えてレジにやってくる。
 

ー店員 すみません。会計の方がまだお済みで無いようですが?

ー客A なんや、兄ちゃん。ワイは神様やないんか? さっきのおっちゃんも言うてたで

ー店員 ですが、お会計がまだ・・・

ー客A  知らんなぁ。聞いたこともないわ。どこの神様がお供えもんもろて、カネ払うんや。普通は逆や、逆。こっちが五円玉もらわなアカンのやけど、今日のところはタダにしといたる。天ぷら美味かったで。ごちそうさん。


   男が店を出る。


ー客B おい、兄ちゃん! 食い逃げやぞ! はよ、捕まえなアカン!


   客Bと店員、店を出て男を追いかける。店を出たすぐの場所で客Aは捕まる。


ー客A なんや! ワイは神様なんや! こんなことしてエエと思とるんか!

ー客B アホか! 食い逃げする神様がどこにおるんや!

ー客A  神やー! ワイは神様なんやー!

ー客B アカンわ。こいつ完全に頭がおかしいなっとる。兄ちゃん、こいつちゃんと押さえて警察に突き出すんや。現行犯やからすぐに捕まる。

ー店員 はい!

ー客B ほなな。色んな客がおって、兄ちゃんも大変やな。

ー店員 ありがとうございました。

   客B去る。その背中に店員は頭を下げる。

ー客A 神やー! ワイは神様なんやー!!!

  客A叫び続ける。

 AHOニュース
5日午後12時35分ごろ、京出比市の飲食店で、職業不詳、自称神の男が無線飲食の現行犯で逮捕された。 男はDX天ぷら定食(1890円)を飲食した後、代金を支払わずに店を出たところを店員に取り押さえられている。 警察の調べに対し男は「ワイは神や。お供えもんをタダで食べて何が悪い」と意味不明な供述を続けており、精神鑑定も視野に入れて捜査が進められている。

(おしまい)

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