愚者空間

KDP作家牛野小雪のサイトです。小説の紹介や雑記を置いています。

2015/06

『長い寄り道』が発売されました

短篇集『長い寄り道』が発売されました。
以下アマゾンからの引用。過去記事の転載です。


以前の版の『長い寄り道』は廃版になり、他の短編と一緒に『長い寄り道』に収録されました。



 




内容紹介
長い寄り道。それは逃避への道。 
すっかり自信を無くしたある作家は自分の自信を取り戻すために小さな小説を書いてみることにした。その歩みは怯えながらそれでいて着実に進んでいく。これは彼が己の自信を取り戻す心の散歩道。珠玉の短篇四篇集。 

1.『アーモンドの花』 
とある事情で外国から逃げてきた男とその娘リタ。 
男は父の畑を手伝うようになり、そのかたわらで父の土地を借りてアーモンドの木を植えるようになった。僕とリタは仲良くなるが、彼女の父親がアーモンド事業で成功を収めるようになると二人の関係はおかしくなり始めた。消えない思い出を胸に秘めた男の物語。 

2.『マリッジブルー』 
同棲中の恋人から突然プロポーズされたバンドマン。 
“おい、ちょっと待ってくれ。俺はまだ結婚したくないんだ。” 
二人の関係はもうそれを言える状態ではなかった。結婚するか結婚しないか。男はギターを抱えながらTVの前で考え続けるが、結局一人では答えを出せず、バーを経営する坂田先輩とタコ焼き屋をやっている多田先輩をそれぞれ訪ねることにした。 

3.『猫と妻の思い出』 
保健所で殺処分されるはずだった茶トラのメス猫を僕は飼っていたが、妻はその猫に触れようともしなかった。ある日僕の猫が姿を消した。彼女が捨てたに違いないのだ。絶対に許せない。浮気をするだけでなく猫まで捨てるなんて。人の心を持たない妻に僕は腹を立てた。必ず全てを暴いてみせると心に誓った。 

4.『ベンツを燃やせ』 
“俺達のベンツを燃やそう!” 
これが俺達を結びつける秘密のキーワードだった。 
去年から首を切られた社員はこれで8人目だった。今度は誰が首を切られるのか誰もがビクビクしていたが、とうとう俺は怒った。俺の怒りは社員全員に燃え広がり、その怒りは社長のベンツに向けられることになった。 


長い寄り道について
1.アーモンドの花

もともとはこれを書くだけの予定だった。原案は原稿用紙10枚。それほど期待してはいなかったのだが、わりといい出来だったので、もっと書いてみようと思った。うん、4つの中では一番良いんじゃないかな。評価する人がいるとすれば、たぶんこれか『ベンツを燃やせ』かのどちらかだろう。


2.マリッジブルー

これはなかなかの作品。書いている途中で止まらなくなった。

気が変わらなければ、設定と舞台を替えて別の作品で書くだろう。メモを取ってあるが、なかなかの物になる予定。今書いている物が詰まったら、こっちを先に書こうかな?

放っておくと終わりそうになかったので、他とのバランスを取り、頑張って終わらせた。書いたあとでもまだ余韻が残っているのはこれ。


3.猫と妻の思い出

サスペンスっぽい。純粋なサスペンスではないが、うん、ドアノッカーとか蒲生田岬に雰囲気は似ている。ああいう話をまた書けるだろうか。ちょっと自信がなくなってきた。別にサスペンスと読まなくてもいいようには書いてある。完成度は一番高い。逆に言えばここから発展させられる手応えは感じられなかった。


4.ベンツを燃やせ

誰かがこの短編集を評価するなら『アーモンドの花』かこれだろう。実は今書いているのはこれに近い雰囲気だ。もっともベンツを燃やしたりはしないが。

上記三つは今まで書いてきたもの。最後のひとつはジョーカーとして書いてみた。

小説に数値を付けるとしたなら、攻撃力特化、防御力はスカスカという物。あまり細かいところに突っ込んではいけない。この手の小説は勢いで読む物なのだから。

“てめえふざけたもの書いてんじゃねぇ!”なんて怒られなければいいが……。

でも何回も読み直した。読み直せる物だった。意外に受けるのではという希望的観測。




 

『死ぬかと思って(A Day’s Wait)/アーネスト・ヘミングウェイ』100度の熱で息子が死なない理由

 ヘミングウェイの小説でインフルエンザにかかった息子が体温計で熱を測ると100度と出て、もうじき死ぬんだと思い込む話がある。物語の結末は単位の違いで100度といってもそれは華氏(F→正確には℃のように小さな丸が左上に付くが変換ででてこない。ちなみにFはファーレンハイトと読む。なんだかかっこいい)のことで摂氏(℃)とは違うと諭す話がある。

 ちなみに華氏100度とは37.8度のこと。まぁ死ぬような温度ではない。ストーリー上で最高の102度でも38.8ぐらい。インフルエンザならこれくらいの熱が出てもおかしくない。

 ちなみに華氏における水の沸点は212度、融点は32度。覚えておくと何かの役に立つかもしれない。



アルコールストーブについて

理科の実験で使ったアルコールランプではなくてストーブ。

ストーブといっても冬に猫が集まる暖房器具ではなくて、コンロみたいなもの。

燃料は簡単に手に入る家庭用燃料アルコール(コーヒーのヘビードリンカーなら持っている?)。材料は空き缶で作れる。

小さなポッドなら湯を沸かせるので、アウトドアに持って行くことも可能。子供の秘密基地に落ちていることがある。そばには燃えたERO-MAGAGINE。ときどき小火騒ぎが起きるのは虫眼鏡のせいだが、これを作れるぐらいの頭を持っていればそんな心配はないだろう。

たぶんね。






猫は高い所から落ちても大丈夫だにゃン?

猫は高い所から落ちても大丈夫だにゃン。

動画サイトからいくつか拾ってきたにゃン。

今日はそれを紹介するにゃン。

 



高い所から落ちても大丈夫にゃん?

 



Luckyちゃんは26階から落ちても大丈夫だったにゃん。(ABCニュースだから直接YOUTUBEにいってほしいにゃん)

 



猫も空を飛ぶにゃん(後半恐がっている猫がいてちょっとかわいそうにゃんね……オソロシア)

 

 



OH CRAZY…死んだけど飛んでいるにゃん(閲覧注意にゃ)

 



46階から落ちても大丈夫だった猫もいるにゃん。

高い所から落ちて大丈夫なのは運が良かっただけだにゃん。

死ぬ時は二階からでも死ぬんだにゃん。

珍しいからニュースになるんだにゃん。

試しに落すようなことは絶対にしちゃいけないんだにゃん。

お家の猫は大事にして欲しいにゃン。

バイバイニャーン!!!(パクってごめんね、電書猫にゃん)



長い寄り道をよろしくにゃん!!!

長い寄り道について

 




1.アーモンドの花

もともとはこれを書くだけの予定だった。原案は原稿用紙10枚。それほど期待してはいなかったのだが、わりといい出来だったので、もっと書いてみようと思った。うん、4つの中では一番良いんじゃないかな。評価する人がいるとすれば、たぶんこれか『ベンツを燃やせ』かのどちらかだろう。

 



2.マリッジブルー

これはなかなかの作品。書いている途中で止まらなくなった。

気が変わらなければ、設定と舞台を替えて別の作品で書くだろう。メモを取ってあるが、なかなかの物になる予定。今書いている物が詰まったら、こっちを先に書こうかな?

放っておくと終わりそうになかったので、他とのバランスを取り、頑張って終わらせた。書いたあとでもまだ余韻が残っているのはこれ。

 



3.猫と妻の思い出

サスペンスっぽい。純粋なサスペンスではないが、うん、ドアノッカーとか蒲生田岬に雰囲気は似ている。ああいう話をまた書けるだろうか。ちょっと自信がなくなってきた。別にサスペンスと読まなくてもいいようには書いてある。完成度は一番高い。逆に言えばここから発展させられる手応えは感じられなかった。

 



4.ベンツを燃やせ

誰かがこの短編集を評価するなら『アーモンドの花』かこれだろう。実は今書いているのはこれに近い雰囲気だ。もっともベンツを燃やしたりはしないが。

上記三つは今まで書いてきたもの。最後のひとつはジョーカーとして書いてみた。

小説に数値を付けるとしたなら、攻撃力特化、防御力はスカスカという物。あまり細かいところに突っ込んではいけない。この手の小説は勢いで読む物なのだから。

“てめえふざけたもの書いてんじゃねぇ!”なんて怒られなければいいが……。

でも何回も読み直した。読み直せる物だった。意外に受けるのではという希望的観測。





以前の版の『長い寄り道』は廃版になり、他の短編と一緒に『長い寄り道』に収録されました。



 

出版業界では常識? 表紙を観察して気付いたあれこれ

つい先日、『長い寄り道』という短編集をAmazonに出した。その時に色々と表紙を観察して気付いたことがあったので、ここに備忘録として書いておく。


ブログ1表紙考察

1.私はすぐに帯を捨ててしまうので無事な物を探すのに苦労したのだが、この両者を比べると、本の下3分の1はイラストやデザインが控えめになっている。この部分に題名や、著者名が書いてある本は一冊もなかった。
 ちなみに私の本はほとんどがここに著者名が入っている。でも、いいんだ。帯なんて付けないし、付けるときは配置を変えることもできるから。


表紙考察2

2.人物の顔は正面か左を向いている。ついでに言えば脳みそだって左を向いていた。
上の写真で左の方はあまり聞いたことのない出版社から出ていた。産業出版センター。たぶんあまり出版のノウハウがない。理由は下。



表紙考察3

3.帯を付けると下唇から下が隠れる。右は顔全体が写る。だからなんだって話だが、たぶん右は意識してこの配置にしていると見た。まぁ、左だって帯の大きさを変えればいいんだけど。


表紙考察4

4.文字の大きさについて。左はヘミングウェイの短編集、背表紙には白枠の文字が書かれているが、黒枠の方の文字が大きい。恐らくノーベル賞のネームバリューにより題名の文字よりも大きくなっている。
 右は村上春樹。著者名よりも題名の方が大きい。ノーベル賞を取れば大きくなる?
 イラストは半分より上に配置されている。ほとんどの本がこうだった。


表紙考察5

5.帯下。ほとんど情報量なし。たいていこの部分に出版社の名前が書いてある。出版社自身が自社にネームバリューが無いことを自覚している?(それが分かっているのなら、本屋では出版社別じゃなくて、著者別にしてくれぃ)
まぁ、たいていの帯には出版社名が記載されているんだけどね。でもでかでかと書いているのはひとつもない。


表紙考察6

6.総括。帯は下3分の1。著者名や題名はその上。ノーベル賞をまだ取っていないのなら、著者名は題名より小さくする。イラストは中心より上に配置。顔は正面か、左へ向ける。

【余談】帯といえば、本の大きさ3分の1が目安だと思っていたが、先日、本を丸々覆うタイプの帯を見つけて驚いた。たぶんKDPで表紙すべてを帯にした著者はまだひとりもいないのでは?

でも、その本の名前も著者も忘れてしまった。立ち読みさえもしなかった。青っぽいというのだけは覚えている。そういう意味では失敗なのかもしれない。だれか挑戦してくれないかな・・・。

(終わり)



以前の版の『長い寄り道』は廃版になり、他の短編と一緒に『長い寄り道』に収録されました。



 





真論君家の猫 上下 表紙作成について【KDPの表紙作成についての雑感】無念残念旧版の表紙は廃止、悲しいよ~

このたび『真論君家の猫』を分冊して売ることにしました。
元の表紙に上下を打ち込むだけだと芸がないので、執筆を中断して表紙を作ってみた。
その作成の流れを書いていきます。参考になればありがたい。
表紙の縦横比は黄金比ではなく白銀比 1:1.414。
KDPのヘルプなんて知ったことか。どう見たって黄金比は細いように見える。

jpg3
1.牛野君の家には3台のパソコンがある。1つは執筆&エイジオブエンパイア用のpc”A”フォトショを使って表紙も作る。2つめはネットにつながるPC”B”、3つ目は壊れて動かなくなったノートパソコン。文章だろうが表紙だろうが、たいていは使い慣れたひとつめのパソコンで作って、2つめのパソコンで確認をする(スペックはこっちが上。Aの方だと広告の動画でフリーズする。回線は切った)。
上の画像は上の最初の案。Aで見たときは結構いけると思ったが、Bで見ると色が弱いように感じた。でも言い訳すると古いパソコンで見ると本当に良い感じに見えたんです。こんなんじゃないんですよ・・・・・・。


真論君家の猫 上のコピー 2
2.黄色い部分を増やして目立つようにする。グラデーションをなくして色をはっきり出すようにした。



真論君家の猫 上のコピー
3.アスファルトの色が薄いので濃くする。真論君のシルエットも下の方が薄かったので黒く塗りつぶした。ここでひとまず上は完成ということにした。舞台は日本だが、ちょっとアメリカっぽい。


真論君家の猫 下のコピー
4.下の素案。右上のシラコさんが見えづらい。
とある事情で何かに目覚めたので、青い部分は帯を意識した。


jpg2
5.境界線を太くしてシラコさんをはっきりさせた。
帯を意識して作ったのだから、下の青い部分にテキストを挿入する。
新時代の猫小説と大書きしてあるが間違ってはいない。世紀の初め頃に書いたのだから間違いなく新時代の猫小説だ。けっして嘘は言っていない。


jpg2
6.思うのだが、絵も文章と同じで必要の無いものは削ってもいいのではないか?
とりあえず消してみて意味が分ったら、それは正しいみたいな。
3匹の猫に名前を振っていたが、消すことにした。たぶんこっちがいい。
USHINO syousetsuまで消すと寂しくなるので残しておいた。


真論君家の猫 jou 1
7.KDPの管理画面で上下の雰囲気が違うと変だったので、上を変更。
気に入っていたんだけどな・・・・・・。


jpg22
8.下の時とおなじでミータンが入っていたダンボールから文字を削除。
題名が右によっていたので真ん中に寄せる。名前部分も下と同じにした。

word type cover8
旧版の表紙。元々は一冊だったが上&下巻になった。
なかなか気に入っていたけれど、上下と雰囲気を合わせるためにあえなく変更。


真論君家の猫 上下 帯文句つきのコピー
こちらが新しくなった上&下巻。蝶3匹は細かい作業で思い入れがあったのでこっちに引っ越した。
水平方向に反転して黒く塗っただけである。
右上にあるのはそれぞれ上下巻からコピーしてきた。題名と著者名は下巻からの流用。
足したのは猫とぐらい。それと帯文句か。
上巻は半日がかりだったが、こちらは半時間もかからなかった。ちなみに旧版の表紙は一週間かかっている。


以上終わり。
表紙を作り直して感じたのは絵も小説と同じで、拙いうちは何でも詰め込もうとしすぎる傾向があるのではということ(どちらもエラそうに言えるほどではないが)。元々の上巻表紙(道路際にミータンが捨てられている画)はフォトショップのファイルで17MB、旧版の表紙は36MBもある。サイズでいえばちょっと小さいはずのに容量が2倍以上もある。
作り直した上巻は8MBまで削れた。たぶん見た目も8MBの方が良いはず。上&下はかなり横着な造りなので4MBしかない。とてもスムーズにフォトショップが動作した。
これを書いている途中でいくつか足したものもある。ほんのちょっとだけ。
これが誰かの役に立てば幸いです。



2015年 6月 18日 牛野小雪より 



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『真論君家の猫』のリリース記事

クロスケは金目の黒猫。母上や兄弟達と違って頭から爪先まで黒い。
ある日突然主さんに捨てられたが、偶然そこを通りかかった真論君に拾われる。
名前はミータンに変わり、首には赤い首輪が付いた。エサは毎日くれるがカツオブシはケチり気味のようだ。
しばらく真論君家の猫として暮らしていたが、それにも飽きて家を抜け出したある日、ミータンは隣の家で飼われているサバ猫のサバトンさんに導かれて家の裏山で開かれている猫の集会へ行き、そこで新たな猫達と出会う。


他の小説と何が違うか
『真論君家の猫』が他の小説と異なる点は、その独特な視点とテーマにあります。主に以下の三つの要素が際立っています。

1. 猫視点の深い描写
物語は猫の視点で描かれています。主人公である「ミータン」が、自分の世界をどのように感じ、考え、成長していくかが、非常に詳細かつ感情的に描かれています。特に、猫が抱える小さな疑問や不安、他者との関わり方が、リアルに反映されています。猫の独特な視点が人間社会や日常を新鮮に描き出しており、読者にとって新しい視点から世界を再発見する機会を提供しています。

2. 擬人化しすぎないリアリズム
擬人化された猫が主人公ではありますが、この小説はあくまで「猫」としてのリアリティを強調しています。たとえば、猫特有の行動や思考が、擬人化しすぎず、自然な形で物語に組み込まれています。これにより、ファンタジー的な要素がありながらも、現実感を失わないバランスが取られています。

3. 感情的で哲学的なテーマ
猫たちの生活を通じて、人生や社会に対する洞察が描かれています。特に「存在の価値」や「居場所」というテーマが強く表現されており、猫の視点を借りて、人間社会や人間関係に対する深い洞察がなされています。主人公ミータンが、新しい環境での適応や、過去の猫との対比を通じて、自身の存在意義を見つけていく過程は、哲学的でありながら感情的な共鳴を生み出します。

これらの要素により、『真論君家の猫』は、ただの動物物語ではなく、より深い意味合いを持つ作品となっています。

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レビュー

試し読み


1 吾輩とはどんな猫?


 どんなものにも抜け道はある。法律、税金、就職活動。

 ぼくは家の外に出る抜け道を見つけた。猫でなければ通れないような小さな穴だ。もちろんどこにあるのかは秘密である。ぼくはその穴を通って家の外に出た。

 真論君家のすぐ後ろには山があった。それとは逆に家の前には道路があって、一段低い場所に畑が広がっていた。そこで真論君の父上と母上が腰を屈めている。そのさらに遠くには家が立並んだ場所があり、どうも一日では回りきれない広さだった。

 その日は家の周りを歩いているだけで一日が潰れた。真論君が学校から帰ってきたので、ぼくは家の中に戻った。

「ミータン」と真論君が呼んだので、彼の足元に駆け寄った。真論君はぼくを抱き上げてアゴの下を指先で撫でてくれた。頭の中が溶けていく。ノドがゴロゴロと鳴る。

 一通り撫で終わると、真論君はチカチカ光る板3を一心不乱に見つめ始めた。相手をしてくれないので「みゃあ、みゃあ」鳴いてみたが何の反応もない。どうやらあの光る板を見ていると耳が聞こえなくなるようだ。それならと彼の膝におでこや胴体を擦りつけてみると「いまちょっと忙しいから」とぼくを脇にどけた。

 母上は「もうやめなさい。馬鹿になるわよ」と言ったが全くその通りだ。口を半開きにして画面を見つめる彼の顔を見れば一目瞭然だ。彼の将来のために良くないことは明白で、このままでは目と耳をあの板に奪われてしまうだろう。頭の中まで駄目になる前に、今すぐ打ち壊してしまうのが正解だ。

「違うよ。本を読んでいるんだよ」

 真論君はそう言ったが、母上は「嘘おっしゃい。本なんか開いていないじゃない」と言った。

「母さん、古いよ。今じゃこれで本が読める時代なんだ。紙の本は教科書だけさ。あ~あ、教科書も電子化されたら良いのに」

「古くても何でも良いから、もうやめなさい。宿題はしたの? お父さんに言うわよ」

「はいはい」

 真論君はそう言って自分の部屋に戻ると宿題に取りかかった。さっきとはうって変わって向こうから遊ぼうとしてくるし、頼んでもいないのに撫でてくる。宿題という物が何かは分からなかったが、何も進んでいないことは分かった。そうして何もしないまま夕飯の時間になった。

 食事の席で父親は言った。

「宿題は終わったのか」

「やろうとはしたんだけどミータンが邪魔するから全然進まなくて」

 ミータンとはぼくのことだ。とんだとばっちりだと思った。

「飼うのは良いが宿題はしないと駄目だぞ。ミータンはここに置いていきなさい」

「うん」

 猫が人語を話せないのを良いことに勝手な罪を擦りつけられた。「それは違う」と抗議してみたが、猫語は全く通じなかった。

 夕飯が終わると真論君は部屋に戻り、ぼくは父上の膝に置かれた。ぼくはこの家の真の権力者が父上だと見抜いていたので、うっかり粗相をしないように身を静かに保ちながら、一緒にテレビを見ていると「なんだ、この猫。やけに大人しいじゃないか。まるで借りてきた猫だな」と父上が背中を撫でてきた。

 ずいぶん乱暴な撫で方で「みゃあ」と抗議すると、何を勘違いしたのか、父親はぼくが喜んでいるものだと勘違いして「そんなに良いか」と撫で続けてきたのにはまいった。

 酒に酔っぱらった父上の顔は真っ赤に染まっていて、笑うたびに口から臭い息が漏れている。力任せに撫でるので体が回る。頭も回る。生きた心地がしない。上も下も分からないほど揉みくちゃにされていると部屋のドアが開いた。においで真論君だと分かったので、これ幸いと父上から脱出して真論君の膝に座を改めた。

「宿題は終わったのか」と父上が訊くと「うん」とそっけなく真論君は答えた。手にはまたあの光る板を持っていた。

「おい、ゲームもネットも九時以降は禁止だぞ」と父親は言った。

「違うよ。本を読んでいるんだ」

「親は騙(だま)せないぞ。ちょっと見せてみろ」

「だって本当だから」

「エロ本でも読んでるのか?」

「違う!」

 真論君は父上に光る板を渡した。

「あぁ『吾輩は猫である』か。夏目漱石。へえ、こんな物で本が読めるなんて時代も変わったなあ」

「そんな言い方、年寄りみたいだよ」

 そう言って真論君は父上から光る板を取り返した。

「ところで吾輩はどんな猫か知っているか」

「さあ」

「読んでいるのに知らない?」

「青と白の縞模様じゃないかな?」

「お~い、『吾輩は猫である』の吾輩はどんな猫か知っているか?」

 父上は少し離れた場所にいる母上に訊いた。

「さあ、茶色の縞模様じゃない?」

「いきなり意見が分かれたか。実を言うと俺はずっと黒猫だと思っていた。他の人に聞くと、白猫と言う人もいれば、茶トラ、キジトラ、三毛にヒョウ柄、聞く人によって違う猫が出てきた。それで実際に読んでみると正解した人は誰もいなかった。黒でも白でも縞模様でもない」

「結局、どんな猫だったの?」

「それは忘れてしまったが、よく分からない色だったことは覚えている。小説なんていい加減な物だ。どんな猫かは書かれているのに、皆が勝手に自分の吾輩を想像しているんだ。それでも読む事ができるのだから、猫の毛なんてどうでも良いんだ。猫だけじゃない。人間でも同じで、読み手は自分だけの登場人物を想像しながら読むから、小説の人物描写なんて読み飛ばしても問題ないんだ」

「真に受けちゃ駄目よ」と母上が言う。

「とんでもない。昔々、大学で論文の課題が出た時に思い切ってそれを書いてみたんだ。すると教授から『君の書く論文は良いね。一番面白いよ』とお褒めの言葉を貰った。つまりこれは大学の先生も認めた立派な考えなんだな」

「それじゃあ、どうしてもっと立派な人にならなかったの?」

「というのも先の論文に味をしめて、同じ調子で書き飛ばしていたら、別の教授達からお叱りの言葉を貰ってね。お情けで卒業はできたものの成績はギリギリだったから、箸にも棒にもかからずこんなT島県の片田舎で埋れることになったのさ。今思えばあの教授の褒め言葉で人生が狂ってしまった。あの時真面目に頭をひねり続けていれば、総理大臣は無理でも博士ぐらいにはなれたはずだ」

「無理無理、だって分数の割り算ができないもの」

「できないんじゃない。詐欺だということを見抜いているだけだ。あれはこの世の道理に合わないことだ。なぜ割る時に分母と分子を入れ替えなければならない。昔、学校の先生に訊いてみると、これはこういう物だからこうなんだという強引な答えが返ってきた。道理も分からない物を子供に教えるとはどういうことかと怪しんで、俺は授業中考えに考え抜き、ついにはこれが国家的な詐欺だということを見抜いた。いや、正確には騙している側でも怪しいと思いながら、これはこうでこういうものだと昔から教えられたという理屈で、空虚な教えを子供に語り継いでいるんだ」

「考えすぎじゃない?」

「考えてもみろ。3分の1とは何だ。1は3で割り切れないのだから、そんな物は存在しないはずで、存在しない物をさもあるかのように扱うのはおかしい話だ。3分の1を3分の1で割れば1になるのはさらにおかしい。嘘に嘘を重ねれば本当になると言っているようなものだ。だがこんなことは世間によくある話で、存在しない物をさもあるかのように騒ぎ、存在する物を存在しないように扱うことがごまんとある。それと同じように分数の割り算も存在するように見えるが本当は存在しない詐欺のようなものだ」

「あなた疲れているのよ。お酒の飲みすぎだわ。お風呂に入ってきたら」

「分数は存在しない。どれだけ理屈を並べ立られても俺は騙されにゃい」

 最後には口がもつれていた。足も同じようにふらふらしていて、父親は風呂場へ行く間にドスンドスンと何度も壁にぶつかっていた。
 ぼくは鏡で自分の体を見た。人間にとって猫の毛など、どうでもいい話かもしれないが、猫の身としては一生の一大事である。

 ぼくの毛色は爪先から頭の天辺まで全て黒一色で、ヒゲや肉球でさえ黒い色をしている。黒でないのは舌と爪と目の色ぐらいだ。母上は白い毛並みに青と灰色の縞模様を頭から被った美猫で、兄弟達もまた同じような毛色だったのに、一匹だけ黒一色に生まれたのは全くの不思議である。

『神になったお客様/T・S・カウフィールド』

題名:神になったお客様
作者:T・S・カウフィールド


   騒がしい店内。側を通りかかった店員を客Aが引き留める。


ー客A おい、兄ちゃん! いつまで待たせるんや!

ー店員 申し訳ございません

ー客A 客は神様やろうが! それをこんなふざけた対応で済ませてええと思とるんか!?

ー店員 現在大変込み合っておりまして。ご迷惑をおかけいたします。 

ー客A 謝ってくれんでもええんや! あっちの客はワイより後に来たのに、先に食べよるぞ! どういうことや! ワイを忘れとるんちゃうか!?

ー客 大変申し訳ございません。お客様のDX天ぷら定食は少々お時間をいただくことになっております。

ー客A もう、タイムオーバーや! ほれが神様に対する態度か! 他の客はどうでもええ! ワイのを先にしてくれや!

ー客B ほう、神様ですか。あなたはどちらの神様でございますか?

ー客A なんや、あんたは?

ー客B 珍しいと思いましてね。神様といえば姿を見せず、声も出さず、我々がお供えしたものを静かに召し上がるものとばかり思っておりました。日本は八百万の国と言うし、実際に姿を持って怒鳴ることもあるようで、なにぶん世間知らずで存じ上げておりませんでした。


   客B手を合わせて客Aを拝む


ー客A ・・・・・・・そこまでせんでもええわ。もう分かったわ。兄ちゃん、悪かったな。けど、はよ、持ってきてな。美味いの頼むで。ワイは神様なんやから。

ー店員 はい


 客Aの頼んだものがくる。客Aはそれを食べ終わるとレジを通りすぎようとする。店員慌てて駆け寄る。客Bもちょうど食べ終えてレジにやってくる。
 

ー店員 すみません。会計の方がまだお済みで無いようですが?

ー客A なんや、兄ちゃん。ワイは神様やないんか? さっきのおっちゃんも言うてたで

ー店員 ですが、お会計がまだ・・・

ー客A  知らんなぁ。聞いたこともないわ。どこの神様がお供えもんもろて、カネ払うんや。普通は逆や、逆。こっちが五円玉もらわなアカンのやけど、今日のところはタダにしといたる。天ぷら美味かったで。ごちそうさん。


   男が店を出る。


ー客B おい、兄ちゃん! 食い逃げやぞ! はよ、捕まえなアカン!


   客Bと店員、店を出て男を追いかける。店を出たすぐの場所で客Aは捕まる。


ー客A なんや! ワイは神様なんや! こんなことしてエエと思とるんか!

ー客B アホか! 食い逃げする神様がどこにおるんや!

ー客A  神やー! ワイは神様なんやー!

ー客B アカンわ。こいつ完全に頭がおかしいなっとる。兄ちゃん、こいつちゃんと押さえて警察に突き出すんや。現行犯やからすぐに捕まる。

ー店員 はい!

ー客B ほなな。色んな客がおって、兄ちゃんも大変やな。

ー店員 ありがとうございました。

   客B去る。その背中に店員は頭を下げる。

ー客A 神やー! ワイは神様なんやー!!!

  客A叫び続ける。

 AHOニュース
5日午後12時35分ごろ、京出比市の飲食店で、職業不詳、自称神の男が無線飲食の現行犯で逮捕された。 男はDX天ぷら定食(1890円)を飲食した後、代金を支払わずに店を出たところを店員に取り押さえられている。 警察の調べに対し男は「ワイは神や。お供えもんをタダで食べて何が悪い」と意味不明な供述を続けており、精神鑑定も視野に入れて捜査が進められている。

(おしまい)

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『死ぬかと思って(A Day’s Wait)/アーネスト・ヘミングウェイ』100度の熱で息子が死なない理由

 ヘミングウェイの小説でインフルエンザにかかった息子が体温計で熱を測ると100度と出て、もうじき死ぬんだと思い込む話がある。物語の結末は単位の違いで100度といってもそれは華氏(F→正確には℃のように小さな丸が左上に付くが変換ででてこない。ちなみにFはファーレンハイトと読む。なんだかかっこいい)のことで摂氏(℃)とは違うと諭す話がある。

 ちなみに華氏100度とは37.8度のこと。まぁ死ぬような温度ではない。ストーリー上で最高の102度でも38.8ぐらい。インフルエンザならこれくらいの熱が出てもおかしくない。

 ちなみに華氏における水の沸点は212度、融点は32度。覚えておくと何かの役に立つかもしれない。

 

(おしまい 牛野小雪 記)







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