2013/07
火星へ行こう。
なんだそれは。中二病か? あるいはNASAのプロパガンダ?
違う。これは、人生のメタファーだ。
この小説を読む理由? あるとも、ないとも言える。
でも、わたしは読む。
なぜなら、文章が剥き出しだからだ。
どの小説も“洗練”されすぎている。
安全。
滑らか。
無菌室で育てられた子どものような小説が多すぎる。
その点でこれは異常だ。
文体がたまに崩れる。
主語が抜ける。
視点が迷子になる。
でも、そこで書き手が見える。
ああ、ここで作者は苦しんだな。
書けなかった。けど、書いた。
その“あがき”が、いい。
火星が出てくる。
けどそれは、リアルなSFじゃない。
アポロでもないし、イーロン・マスクでもない。
火星とは、逃避であり、希望であり、
絶望の先にチラつく可能性である。
火星へ行こう。
このフレーズを何度も読み返すと
「あれ、これ自殺願望じゃないか?」と思う瞬間がある。
けれど、違う。
ちゃんと生きようとしている。
読めばわかる。
ぐちゃぐちゃな日々を、どれだけ言葉で拾おうとしたかが。
登場人物? それはもう、どうしようもない連中ばかりだ。
夢を語るには遅すぎた。
でも語るしかなかった。
構成は甘い。
伏線は、張っているようで回収されない部分もある。
でもそれがいいんだよ。
人生に伏線回収なんてあるか? なあ。
この本は、読者に優しくない。
たぶん、途中で投げる人もいる。
でも、耐えて、読みきってほしい。
そうすれば、あの一文に出会える。
「あの一文」——それは、
作者があなたの存在を見抜いた瞬間だ。
読んでいるあなたが、なぜ読んでいるか。
それに応えるような言葉が、唐突に落ちてくる。
たった一行のために読む小説って、ある。
それだ、これは。
言い忘れていたが、これは“いい話”ではない。
でも、“本気”ではある。
「書かずにいられなかった」が全部に染みてる。
読み終えたあと、ちょっと疲れる。
でもその疲れが、悪くない。
体内に残る。ザラザラしたまま。
これは火星じゃない。
これは、地球の話だ。
もっと言えば、今、ここにいる、
あなたの話だ。
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